5: ◆ty8oEf4R2M[saga]
2013/06/14(金) 14:42:23.79 ID:syUJYszq0
「では、そろそろはじめるとしようか」
その声と共に、鈍い音を立てて扉が部屋の内側に向かって開かれた。
扉の先はただ白い空間が広がっているだけであった。
ぼくはそこへ向かって歩を進めていく。
「君はまず、綴真也となって人生を生きてゆく」
一歩。さらに一歩と、ぼくは扉の先へと進んでいく。
君は誰を救うのかな。背中越しに、そんな声が聞こえた。
「そういえば。咲坂さんの願いは、なんですか」
「………」
「すみません。答えたくなければ、構わないんです」
今後の参考にしようと思って。ぼくはそう自らの言葉をフォローした。
嘘ではない。願いなどもうぼくのどこにも存在しないのだ。
彼の方を振り返ると、彼は少し寂しげに呟いた。
「ぼくの願い、か」
彼の瞳は、ずっとぼくを見つめていた。
揺らぐことのないその視線が、彼の意思を物語っていた。
ぼくは彼のことを何も知らない。けれど、たった一つ、それだけはわかった。
「ぼくの願いは―――――」
「――――――――――咲坂悠一を、生き返らせることだよ」
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