57: ◆ty8oEf4R2M[saga]
2013/06/18(火) 12:50:31.46 ID:a7iP/0X20
「自殺する部屋?」
どういうことだ。咲坂未来も慎重に言葉を選んでいたはずだ。
咲坂悠一の遺書に書かれていたのは「これからぼくが自殺する部屋」だ。
そして、あの部屋でも、咲坂悠一はそこについて遺書と同じ名称を用いていたはずだ。
「私の記憶違いだといいのですが。でも、そう言っていたように思うんです」
「けれど、私は千夏さんが略称を用いる人だとは、到底思えないんです」
「ほら。色々なところで、正確なところがありませんでしたか」
咲坂未来からみて、北条千夏を正確な人間だと判断している。
彼女の洞察力には目を見張るものがあった。そう言うなら、そうなのだろう。
なら、どういうことなのだろうか。自殺する部屋、というのがあの部屋の正式名称なのか?
「しかし。咲坂悠一は、これからぼくが自殺する部屋。そう書いていた」
咲坂悠一もそう言っていた。そう続けそうになってしまった。
慌ててその言葉を嚥下してから、彼女へと視線を戻す。
思案していた彼女は、思いついたように言った。
「もしかしたら、私たちは読み間違いをしていたのかもしれません」
「読み間違い。ああ、すまない。分からないから、教えてくれないか」
「ええと、これは推測ですが、遺書を区切って読めば、そうなりませんか」
これからぼくが、自殺する部屋に行ってきます。そう読むというのか。
しかし、区切ったところで、根本的な意味に変化はない。
だが、これは重要な違いだ。そう思った。
咲坂悠一は間違いなく、あの部屋について区切らず、こう言っていたからだ。
これからぼくが自殺する部屋、と。
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