過去ログ - ムラサメ研究所を脱走してきたニュータイプ幼女たちが…
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38: ◆EhtsT9zeko[saga]
2013/06/15(土) 23:18:27.59 ID:Ax9gx0y90

「良いお湯でした。あれ、マーク、どうしたの?」

「なぁ、アムロ・レイって、どっかで聞いたことないか?」

そう言ってくれるハンナに構わずに俺はそう投げかけた。すると、ハンナはさして考えるでもなく

「あぁ、あの、ほら。ニュータイプだったっていう、連邦軍のエースでしょ?戦争の直後にちょっと話題になったじゃない」

 ハッとした。そうだ、終戦直後、一時期にマスコミや軍の広報紙なんかにたびたび顔を出してたあのパイロットだ。

でも、あれはもう7年も前の話だ。その後、アムロ・レイの話はとんと聞くことはない。

それをなんで、こんな子ども達が知っているんだ?

「ハンナさん。それじゃぁ、こっちの絵は分かる?」

レオナは、俺の持っていたメモ用紙をハンナに見せる。ハンナは髪をタオルで拭きながら、ポヤポヤっとした様子で

「んー、なんだろ?オーストラリア?」

と言って首をかしげた。

 そうか、オーストラリアだ!この欠けた右上の部分は、コロニーが落ちてできたシドニー湾!

ここに、あのアムロ・レイがいるっていうのか?

「なに、どうしたの?」

ハンナが不思議そうな顔をして聞いてくるので、俺は今あったニケの夢遊病のような言動の一部始終を説明した。

するとハンナは

「ふうん…」

と鼻を鳴らして、ベッドで熟睡しているニケを見やった。それから

「ニュータイプ、ってやつなのかな?ムラサメ研究所に居たんでしょ?」

とレオナに聞く。

「正直にそうだ、と言ったら、私たちは軽蔑される?」

レオナは、まるで心配しているのが手に取るようにわかるほど、心配そうな顔つきてそう聞き返した。

「別に。うらやましいな、くらいに思うけどね」

ハンナはそう言って俺を見る。俺も、別段、ニュータイプとかスペースノイドがどうとかは気にしたことはない。

戦争前は、人口半分が宇宙で暮らしていたんだ。2人に1人がスペースノイドで当然だろう。

それにそもそもハンナの一家はスペースノイドだったはずだ。ハンナが3歳の頃に、うちの隣へ越してきたのは覚えている。

「俺も特に気にはしない。言いにくい物なのか?自分がスペースノイドだとか、ニュータイプだとかってのは」

俺が聞くと、レオナの顔が陰った。

「ええ。地球では、私たちは迫害の対象よ。特に、ティターンズが結成されてからはひどい。

 研究所に居なければ、私も今頃、どこかで殺されているか、良くても鉄格子の中。研究所で無事なのも珍しいケースだけど…」

「じゃぁ、レオナも、この子たちもみんな、そうなのね?」

「ええ、そうよ」

ハンナの質問に、レオナは静かに答えた。

「じゃぁ、ニケちゃんの行かなきゃ、っていう言葉の理由も分かるの?」

「それは…正直、分からない。でも、たぶん…感じてる、私も」

レオナは、少し怯えた表情で俺とハンナの顔を交互に見た。言っていることの意味合いは、率直に言って理解できない。

だが、このレオナの表情は、今の話をして、自分がおかしいと思われることを恐れているのだろう。

彼女がこれまで、どんな経験をしてきたのかはわからないが、おそらく、この表情の原因はそこにあるはずだ。

そして、ティターンズの進めるジオンの残党狩りを名目にしたスペースノイド狩りは、この感覚を恐れているためかもしれない。

俺には理解も共感もできないが、少なくともレオナが恐怖の対象であるとは思わなかった。


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