過去ログ - ムラサメ研究所を脱走してきたニュータイプ幼女たちが…
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572: ◆EhtsT9zeko[saga]
2013/08/14(水) 22:58:42.70 ID:p5dyD009o

「…朝、か」

ユリウスが目を覚ました。私は、彼女の髪を撫でつける。ユリウスもまた、落ち込んでいた。

 開戦の直前、この研究所には、耳をふさぎたくなるような実験計画がたびたび持ち込まれた。

クローン、薬物や精神手術による能力強化、人体実験、エトセトラ。

 もちろん、それを行うよう指示されるのは、担当のユリウス達。彼女は、猛烈にそれに反対した。

だが、上層部は、彼女を切り捨てなかった。切り捨てるには、ユリウスは知りすぎていた。

彼女はそれを察知していた。だからこその反対ではあったのだが、行き過ぎは命に関わった。

ユリウスもそのギリギリのラインで必死に戦った。その結果、レオナを、試験対象から外すことに成功した。

でも、その代償として研究企画室への異動とともに、一つの計画の片棒を担がされた。

 古い神話の、神々から力を得た、狼の姿をした戦士たちの名を取った、ウルフヘズナル計画。

計画の名称自体が、異常だ。暗に、自分たちが神だと言わんばかりじゃないか。

 計画の内容は、簡単。遺伝子操作によって、肉体やニュータイプ能力の強化を施したクローンの作成。

しかも、依りによって、オリジナルとなるのは、レオナだ。

上層部としたら、レオナを放棄する条件として、代わりになる物を手に入れようとしたのだろう。

レオナに直接手を下そうとすれば、私やユリウスが黙っていないのはあいつらも分かっているはずだから。

 ユリウスは、悩んだ末に、その指示を受け入れた。レオナからips細胞を取り出して、その中の遺伝情報を操作した。

細胞は空になった卵子に入れられ、代理母の子宮へ着床された。

 レオナは、ちゃんと、私達の部屋に戻ってきた。

嬉しかったけど、だけど、心のどこかには手放しで喜べない自分がいた。

サイコミュの着想と開発、ユリウスの研究やクローン胚作製の作業。

私たちは、今まで、何をしてきたのだろう?実質、ここでの研究は、ただ単に、戦争の準備をしていただけじゃないか。

その事実が、私達に重くのしかかっていた。そして、開戦してしまった今、それを挽回することなど、不可能に近い。


 私はただ、宇宙空間での作業を安全に行えるようにしたかっただけなのに…

ユリウスは、人類の進化を見ていたかっただけなのに…

私たちは、そのことばかりに集中していて、もっと肝心な、もっと巨大なものをみることができなかったんだ。

 カチャッと静かな音がして、ドアが開いた。

「ママ、ユーリ、おはよう」

レオナが、笑顔で部屋にやってきた。

「おはよう、レオナ」

私も笑顔を返して、両腕を広げて、レオナを迎え入れる。レオナはピョンと、私の腕の中に飛び込んできた。

そのまま、ベッドに倒れ込む。ユリウスも、レオナを私ごと抱きしめてくる。



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