過去ログ - ムラサメ研究所を脱走してきたニュータイプ幼女たちが…
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603: ◆EhtsT9zeko[saga]
2013/08/30(金) 01:16:57.04 ID:woWQEVjWo

「どうしたのさ、真っ暗にしちゃって」

「うん、なんだか、そんな気分でね」

そんなことを話しながら、シイナさんは私の座っていたソファーに腰を下ろした。

「なにか、飲む?」

「あぁ…悪いね、なにかあるかい?」

「うん、バーボンで良い?」

「あぁ」

私はシイナさんの返事を待って、キッチンへ向かってバーボンとグラスを二つに、ロックアイスを持ってホールに戻った。

 氷の塊をグラスに放り込んで、それから、バーボンを注ぐ。

シイナさんはその片方を手に取って私に向かって掲げてきた。

なんだか、らしくなくて、クスっと笑ってしまったけど、私はカチンとグラスを合わせて、バーボンに口を付けた。

 「ふぅ」

シイナさんが、そう声を上げる。

 カラン、とグラスの中の氷が音を立てた。

 「アイルランドは、どうだった?」

私は、二人が帰ってきてから聞きあぐねていた質問をしてみた。

ロビン達が起きていて、なんとなく聞けない感じだったから、避けていたけど、今なら大丈夫だろう。

「あぁ、うん…ひどいもんだったさ」

シイナさんは、うなだれて答えた。

「絶望的な光景は見慣れたと思っていたけどね…強烈だったよ、実際…一面、なんにもありゃしないんだ。

 ぽっかり空いた穴と、元がなんだったのかさえわからない金属片だけが散らばってて、ね…」

シイナさんが見ただろう景色は、テレビ放送で何度も流れていたし、容易に想像が出来た。いや、景色だけじゃない。

その場所に立ちこめていただろう、気配すら、私には手に取るようにわかった。

「報道じゃ、何千万人って話さね、死んじまったのが、さ」

シイナさんは、空になったグラスにバーボンを注ぎながらそう話す。

「けが人は、もう、数える意味なんてありゃしなかったよ。それこそ、見渡す限り、さ」

私は、バーボンを味わいながら、シイナさんの話に耳を傾ける。

コロニーが落ちた、と聞いたその日、私は、いてもたってもいられなくなった。

だって、それは、ただの繰り返しにすぎなかったからだ。

前の戦争で、私達の祖国は、あの巨大な塊をこの地上にたたきつけた。何億もの人々を犠牲にした。

それは、いくらアヤが「どうすることもできなかったことだ」、と言ってくれても、変わらない事実。

それと全く同じことを、ネオジオン、と名乗る集団が行った。止めることはできなかった。

でも、せめて、あのときにできなかったことを、侵略者としてこの地球に降り立った私とは違ったことをしたかった。




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