過去ログ - ムラサメ研究所を脱走してきたニュータイプ幼女たちが…
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819: ◆EhtsT9zeko[saga]
2013/10/07(月) 20:05:17.81 ID:m3HfRBlIo


 「ルーカス、今日は調子が良さそうだね」

入隊してから1年目。俺たちは三人とも無事に、まだ宇宙中を駆け回っていた。

ジオン残党との戦闘を幾度も繰り返していたが、そのたびに、俺は不思議と安心していた。

 「ええ。なんだか最近、体から毒気が抜けている気分で」

「あはは!最初は根暗な子だなぁって思ってたからね、正直!」

その原因は、この人だ。マライア・アトウッド中尉。彼女は、周りの軍人とも、これまでに会ってきたどの兵士とも違った。

底抜けに明るいとか、どこか抜けているとか、そう言うことではない。

俺の勘だが、彼女は、絶望を知っていた。

自分の信念を折られてしまうこと、貫き通せないこと、守ろうと思った何かを守れないということ、

その絶望感のすべてを知っていて、それでも、いや、だからこそ、笑うんだ、と俺は感じていた。

メンタルは弱いし、すぐに焦って周りが見えなくなりがちなところがあるが、その強さは確かに本物だった。

それはもしかしたら、俺が手に入れたかったものだったのかもしれない。

「マライア、そろそろ接敵するぞ。気を引き締めて行け!」

「了解、隊長!」

 俺たちは、乗機のジムスナイパーカスタムUを駆って、ジオン残党の拠点をめざし侵攻していた。

情報では、敵は戦艦1、MS部隊は15機ほどの規模だそうだ。

こちらは戦艦2隻に、MS部隊は予備を含めて30。物量作戦が得意なのは、3年前の戦争からたいして変わってはいない。

加えて、連邦は新規MSの開発を次々と行っているが、ジオン残党は3年前のすでに型落ちのMSを使いまわしている状況だ。

俺たちにとっては、殲滅戦でしかないこの戦いだが

追い込まれたジオンの狂気は、想像を超えて異常であるのを、俺は知っている。

3年前に体験済みだ。微かな油断も出来たものではない。

 不意に、レーダーが反応した。前方12時方向、敵機3!

「来るぞ!」

隊長がそう叫んだ。

「ルーカス、あたしの後ろへ!ついてきてよ!」

マライア中尉が叫ぶ。

「了解です!」

俺は返事をした。

 マライア中尉の操縦技術は、まだ未熟だ。

穴も山ほどあるし、おそらく、本人がやりたい、と思っている動きの半分程度しかできていないだろう印象もある。

それでも俺はその動きについて行くだけで精一杯だった。

あの人はそもそも、3次元機動の概念が普通とは違う。

話をするだけで、あの軽そうな頭の中に、どうしてそんなに複雑な機動イメージが詰まっているのか不思議に思うくらいだった。

それは、既存のMS戦術とも異なり、ましてや、普通のパイロットがこなせるような動き方の要求水準に収まるようなものでもなかった。

実際に、彼女の操縦は、目を疑いたくなる動きをする。

たとえて言うなら、まるで、風に舞う木の葉の様で、

慣性とスラスターによる転舵、軸移動、AMBACのシステム特性の応用、そう言う複雑な要素を、瞬間的に計算して、

風のないこの宇宙空間で、ふわりふわりと不規則に動いて見せる。

 その動きに合わせるのは一苦労だし、追うだけで精一杯と言うのが、本音だ。
 


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