過去ログ - ムラサメ研究所を脱走してきたニュータイプ幼女たちが…
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827: ◆EhtsT9zeko[saga]
2013/10/07(月) 20:10:28.38 ID:m3HfRBlIo

「だからあたしは宇宙に出たの。たくさんの人を助けることは、きっとあたしにはできない。

 でも、せめて身近な大切な人だけは守りたい。そのためには、あたしも強くならなきゃいけない。

 そう思って、宇宙に上がった。みんなには会いたかったし、その、まんなかに写ってる、アヤさんて人がね、

 誰よりも好きだった。

 その人のそばに居て、あたしは、ずっと守ってあげたいって思って、頑張ってる。

 その人の役に立って、喜ばせてあげたい。安心させてあげたい。

 これまで、あたしにそうしてくれたように、あたしは、アヤさんの、隊のみんなと、

 お荷物じゃなくて、仲間として一緒に居たいから…だから…」

大尉は言葉に詰まった。止めどない感情があふれてくるのが感じられる。

「大尉…ゆっくりで大丈夫ですよ…ちゃんと、聞いてますから」

俺は、見かねて彼女にそう伝えた。

彼女は、目に涙をいっぱいに溜めながら、力強くうなずくと、また、大きくため息をついた。

それでも、震えて掠れた声で

「…だから、あたし、こんなことで泣いてちゃいけないのに。泣いてすくんでたら、なんにもできないんだよ…

 誰も助けられないんだよ。それなのに、ライラのことが、悲しくて…悲しくて、どうしようもないんだ…」

 そうか…。俺は理解できた。大尉が、どうしてこんなに強いのかを。彼女は、自分の無力を知っているんだ。

ライラ大尉を助けられなかっただろう事実を、受け止める方法を知っているんだ。

ライラ大尉を失った悲しみを、力に替える方法を知っているんだ。

そして、俺は、それを求めて、大尉のところに来たんだ。いや、それを求めて、大尉とともに、こんなところまで来たんだ。

 俺は…俺はこの人に、何を言ってあげられるんだろう?

俺に、なにか彼女の助けになれる手だてがあるとして、それは一体なんだ…?

「大尉…聞いてください」

考えながらではあったが、気が付いたら俺はそんなことを口にしていた。

「俺は、俺も、これまでに大切なものを守れないで、死なせてしまったことがなんどもあります。

 でも、そこで出会ったのがあなたでした。俺は、あなたのその強さに惹かれた。

 絶望を知り、それでも絶望に飲まれないあなたの強さに、悲しいことを悲しいと言って、泣ける強さに惹かれて、

 俺は一緒に、ここまで来ました。

 もしかしたら、自分の弱さをあなたに埋めてもらいたいと考えているのかもしれない…

 たぶん、それは甘えなんでしょうけど…でも、いえ、だから、泣いてください。

 それはあなたの弱さなんかじゃない。俺のように、悲しみを受け止められず、ただ胸の内にしまいこんで忘れるのとは違う。

 それはあたなの強さです…大切な人を守りたい、でも守れなかった、それでも、

 まだ誰かを守りたいと思えるそれは、弱さなんかであるわけがない。

 あなたの強さのために、ライラ大尉のために、今は、目一杯、泣いて良いんですよ…」

「ル、ルゥカスぅぅぅぅ!」

ガチャン、とコーヒーのカップが床に落ちて砕けた。

次の瞬間、大尉は俺の腕をつかむと、思い切り引っ張ってきて、すがりつくようにして俺の胸に顔をうずめた。

腕を回してあげようと思って、俺は大尉を抱きしめた。小柄な体がブルブルと小動物みたいに震えている。
 


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