過去ログ - ムラサメ研究所を脱走してきたニュータイプ幼女たちが…
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84: ◆EhtsT9zeko[saga]
2013/06/18(火) 22:22:26.15 ID:KMbg4rxB0


「そこの船!とまれ!」

岸からそう叫ぶ声が聞こえる。

漁船は、ちょうど俺たちを堤防から隠すような位置まで進んで、エンジンを止めた。

 まずいな。距離が近すぎる。あの船に注目が集まっている今、この船の陰から抜け出すなんてことは出来ない。

潜ればなんとかなるかもしれないが、ニケとサラにエヴァは泳げないと来ている。

俺はニケを引っ張って潜るくらいはできるが、ただの補給士官のハンナやスペースノイドのレオナにそこまでできるとは思えなかった。

 「へーい、なんです、この騒ぎは?」

船の上に人が現れて、警備兵と会話をしている。30メートルはあるだろうか、どちらも大声で怒鳴っている。

「貴様は、地元の人間か?」

「あぁ、はい。つっても、対岸のマンドラですけど」

「なぜこんなところを航行している?」

「いやあ、今夜獲れたもんをこっちへ運んでおこうかと思ったんですが…」

「この状況を見てわからんのか!厳戒態勢だ!すぐに立ち去れ!」

 ふと、船の上に、別の人影が見えた。金髪の女性だ。彼女は、船の操舵室の壁に隠れて、俺たちに手招きをした。

 なんだ、あいつ?俺たちを助けようってのか?どうする?乗るか?しかし、見ず知らずの人間をこの状況で信用して良い物か…

だが、そうは言っても、現状、このまま泳いで行くより、船に乗せてもらった方が、良いことに違いはない…どうする?

 「へーい。明日の朝にゃ、終わってますかね?」

「今夜のうちにことが済めばな」

「わかりやしたよ。なら、仕方ねえ。明日の朝に出直すとしますわ」

まずい、会話が終わっちまう。

「マーク…!」

サラを抱えたハンナが寄ってきて、俺にそう囁く。

 迷ってる暇は、なさそうだ。

「先に行け」

俺はハンナとレオナにそう声を掛けて船の方に押し出した。サビーノに二人のあとを追わせ、さらにその後ろから俺が追いかける。
船にたどり着いたハンナたちを、女性が物音を立てないよう、慎重に引き上げている。

 ブルンっと船のエンジンがかかった。

 これなら、少し音が紛れる…警備兵と話し込んでいた船頭の機転か?

 俺もなんとか船にたどり着いて、ニケを引き揚げてもらい、自力でデッキまで上がる。

それを待っていたかのように船は方向転換を始める。まだ、サーチライトには照らされたままだ。

船の方向転換に合わせて、岸から死角になる位置に移動を繰り返す。船が岸に背を向けて湾の外へ向かって走り出した。

 追手はない。ひとまず、目先の危険からは逃れられたようだ。

 そう思ったら、ふうと大きなため息が出た。胸が詰まるようだった感覚からも解放される。

今になって、手や足が震えてきた。

まったく、良い根性してるよ、我ながら。



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