過去ログ - 杏「甘えちゃいけない」
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12:[saga]
2013/06/15(土) 01:28:54.00 ID:rH3krSfi0

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「杏」

 事務所でCM用の試供品アイスを食べていたら、突然プロデューサーが杏を呼んだ。あんまり久し振りだったものだから放心して、しばらく返事ができなかった。

「な、なに?」

 焦ったせいで、ちょっとどもっちゃった。でもそこで、プロデューサーがやけに真剣な顔をしてることに気づいて、一気に冷静になることができた。

「なに、そんな顔しちゃって。もしかして杏、なにかやっちゃった?」

「いや、そういうことじゃない。最近 やけに殊勝だからな。なにかあったのか?」

「ネットでの根も葉もない噂なら、べつに気にしてないよ。的はずれだからね」

「知ってたのか。いや、知らない方がおかしいか。双葉杏と言えば今や国民的アイドルだ。そんなお前の異変なら誰だって気になるし、格好のニュースにもなる」

「まったく、みんな大袈裟だよねぇ」

「それだけお前の影響力が凄まじいということだ」

「めんどくさ」

「で、なにがあったんだ?」

 プロデューサーが、今まで見たことないくらい鋭い顔つきになった。ちょっとたじろぎそうになるのをなんとか堪えて、杏は平気のへーざって顔で答える。

「やっと反抗期が終わったんだよ。はは、偉いでしょ?」

「杏。誤魔化すのはやめて、本当のことを言え」

「本当だってば。ほら、杏なんかに構ってる余裕はないでしょ? このあと、みりあの付き添いがあるんじゃないの?」

「……また今度、ゆっくり話そう」

 全然納得いってないって感じで、プロデューサーは渋々杏から離れていった。

 会話の内容はともかくとして、こんなにプロデューサーと話せたのは久しぶりだったから、素直に嬉しい。

 でも、プロデューサーに余計な心配かけちゃってるんじゃダメだよね。

 もっとしっかりしなきゃ。甘えちゃいけないんだから。プロデューサーにこれ以上迷惑かけたら、本当に取り返しがつかないくらい嫌われてしまうから。

 今はがまんだ。どんなに辛くても。






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