過去ログ - 杏「甘えちゃいけない」
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30:[saga]
2013/06/15(土) 19:48:00.71 ID:rH3krSfi0

・・・・・・



 目を覚ますと、部屋は真っ暗だった。

 窓の外から射し込む人工の光を頼りに、枕元の携帯を探り当てる。電源をいれて時間を確認すると、もう夜の10時頃になっていた。

 携帯の光で室内を照らす。もしかしたらプロデューサーがどこかに転がってたりしないかと期待したんだけど、案の定ど
こにもいなかった。プロデューサーは10時間くらい休むと言ってたから、もうとっくに帰っちゃったんだろう。

 そう考えると、せっかくプロデューサーと一緒にいられる時間を無駄にしてしまったような気がして、ちょっと悲しくなった。

 明日も来てくれるのかな? それとも、さすがにちひろに絞られて来れなくなるかな?

 どっちにしても、プロデューサーに迷惑かけるか、杏が寂しくて死にたくなるかのどっちかだ。

 あーあ、いつから杏はこんなに弱い子になっちゃったんだろ。昔は一人でなんでもできたし、一人でいることを辛いとも寂しいとも思ったことなんてなかったのにさ。

 それが今じゃ、たった一日、いや一時間でもプロデューサーに会えないだけで胸が痛くなるなんて。恋の病とはよく言ったもんだね、ほんと。

 よく考えたら、熱が下がったらプロデューサーとはもう会えないんだよね。そう考えると、あと6日くらいは、この強烈な頭痛や吐き気と付き合ってあげてもいいかな、なんて考えてる杏がいる。

 ほんと、取り返しがつかないくらいばかだ。

 そんなことを考えていると、杏の喉から変な音が鳴って、胃が不自然に震えた。唾液が酸っぱくなって、ヤバいと考える前に胃の中のものが出てしまった。

 さすがにお昼に食べたものは消化されてるから、出たのは少量の胃液だけだったらしい。それでも酸っぱい臭いが辺りに充満して気分が悪くなった。

 ほっとくわけにもいかないけど、ちょっと動くだけでも体が悲鳴を上げる 今の状態でタオルを取りに行くのはしんどい。

 そこまで考えたところで、そういえばプロデューサーが杏の体を拭くように渡してくれたタオルがあったことを思い出した。携帯の明かりで枕元を照らすと、よく見ればポカリや水、タオルに薬、冷えピタに洗面器まで置いてあった。おでこに手を当ててみると、すっかり冷気を失った冷えピタがかろうじて貼り付いていた。

 ……どうして、ここまでしてくれるの?

 杏が初めての担当アイドルだったから? 一人にしといたら野垂れ死にそうだからほっとけない? それとも、誰にでもこんなに優しいの?

 プロデューサーの気持ちがわかんないよ。

 嫌いなら嫌いって、ちゃんと言ってよ。じゃないと、ばかな杏は、希望を抱いちゃうじゃんか。

 タオルと水でフローリングを拭いて、布団を頭まで被って胎児みたいにうずくまる。靄がかかったみたいにまとまらない頭で、ぐるぐるとプロデューサーのことばかり考えてると、いつの間にか眠っちゃってたらしい。

 また、あの日の夢を見た。もうやり直せない、幸せだった頃の夢を。






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