31:@[saga]
2013/06/15(土) 19:59:56.18 ID:rH3krSfi0
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メールで来なくていいって伝えたのに、次の日もプロデューサーは杏の家を訪れた。
「熱は……37度8分。結構下がったな」
わしゃわしゃと杏の頭を撫でるプロデューサー。お風呂入ってないし汗がすごいから、あんまり触らないでほしいんだけど。
「下がってなかったら病院に行こうかと思ってたんだが、もうちょっと様子を見てもいいかもな。杏は病院嫌いだし」
「インフルエンザだったらどうしてたんだよ」
「うちの事務所が大惨事になってただろうな。まあ俺が気がつかなかったら杏が危なかったわけだし、俺はそれでもよかったが」
「そういえば、なんで杏の体調が悪いってわかったの?」
「あー。まあ、勘だよ」
絶対嘘だ。この人は真剣なときにはまっすぐ目を見てくるくせに、嘘ついたり誤魔化したりするときはかなりあからさまに目を逸らすから。
気になるけど、言いたくないなら追及しないけどさ。
「気分はどうだ?」
「結構よくなったかも。まだだるいけど、吐き気とかはないよ」
「喉は?」
「結構痛いけど、昨日よりはマシかな」
「悪かった」
びっくりして、思わずプロデューサーの顔をまじまじと見つめてしまった。
「なにが?」
「杏の不調に気づけなかったことだ。最近は仕事を詰めすぎていた。あれじゃ体を壊しても無理はない」
「そうそう、プロデューサーの体力を基準にしないでほしいね。プロデューサーは怪物なんだから」
「ただでさえ杏の体はこんなに小さいんだ。あんまり優秀だから時々忘れてしまうが、お前はまだまだ子供なんだ。だから辛かったら辛いって言っていいんだぞ」
「子供である前に社会人でしょ。休みたいから休むなんて、簡単じゃない」
「逆だ馬鹿。社会人である前に子供なんだ。杏が本当に辛いなら、俺がどうとでもして休ませてやる」
「さんざん杏を振り回した人の台詞とは思えないね」
「杏なら大丈夫だと思ったからな。今までずっと一緒にやってきたんだ、杏が本気で嫌がってたり辛そうだったらわかる」
「ずっと、いっしょに……」
「最近は、あまり会えなくて加減がわからなかったが……いや、これは言い訳だな。とにかく、本当にすまなかった」
「じゃあさ」
杏はプロデューサーのスーツの裾を掴んだ。プロデューサーは目を丸くして、杏の顔を正面から見つめる。
このときの杏は、どうかしてた。熱に浮かされてまともな思考ができなくて、だからこんなことを口走っちゃったんだと思う。
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