36:@[saga]
2013/06/15(土) 20:19:16.57 ID:rH3krSfi0
「あ、杏?」
杏がよほど絶望的な顔をしていたのか、それとも涙腺が壊れたみたいに滂沱と涙を流す様子が異様だったのか、プロデューサーが心配そうな、いや、むしろ不安そうな顔で杏に手を伸ばす。
その手を。今日まで杏のことを優しく撫でてくれた温かい手を、部屋中に響くくらい強く叩きのけた。
「……てけ」
「杏?」
「出てけっ!!」
プロデューサーの体を思いっきり突き飛ばす。非力な上に弱ってた杏に押されたプロデューサーは、けれど呆気なく尻餅をついた。
「でてけっ! でてけ! でてけぇ!!」
手当たり次第に物を投げつける。ポカリ、洗面器、スタドリ……全部、プロデューサーが杏のために買ってきてくれたものだった。
「杏っ! 落ち着け!!」
「でて……けほっ! ゲホッ!! ……で、てけ……でてってよぉ……!」
「わ、わかった。出ていくから、だから落ち着いてくれ、杏……」
プロデューサーは広げていた書類をかき集めて、逃げるように杏の家を飛び出していった。
完全に終わった。
最悪だ。勝手に告白して、勝手にキレて当たり散らすなんて。人として最低のことをしてしまった。
「うぶっ……うぇぇっ」
多分熱のせいじゃない吐き気に襲われて、プロデューサーが杏のために作ってくれたうどんを吐き出してしまった。
こんなんじゃ、絶対にアイドルなんて続けられない。プロデューサーが別の人に変わったって、今まで通りのパフォーマンスなんて出来るわけがない。
今日、杏は女として、アイドルとして終わったんだ。
「うぅ……うわあああああああん!!」
そこからの記憶はほとんどない。気がついたら瓦礫の山みたいになった部屋の真ん中で、布団にくるまって震えていた。
そしてそのまま、プロデューサーとも音沙汰なしで丸2日が過ぎていった。
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