過去ログ - 杏「甘えちゃいけない」
1- 20
48:[saga]
2013/06/15(土) 22:36:41.53 ID:rH3krSfi0

・・・・・・



「ひどいね、これは」

 あれから3回目の朝。目が覚めると、どうやってかアイドルたちが杏の家に上がり込んでいた。

「もともとこんなに部屋が汚いのかな? いや、それはないか。プロデューサーが入り浸ってたんなら片付けるよね」

「杏ちゃん……大丈夫? 怪我してない?」

「物に当たるだけ、まだ良心的ってところかしら。うふ」

 そこにいたのは、凛、かな子、まゆの3人だった。そのメンツを見ただけで、3人が何を言いに来たのかは一目瞭然だ。

「……みんな、仕事は?」

 布団に潜ったまま3人に話しかけると、杏の声はお婆ちゃんみたいに枯れきっていた。

「朝早くにごめんなさい。まゆたち3人が同時に来れるタイミングが この時間だけだったの」

 杏の声にたじろいだ他の2人と違って、まゆは顔色ひとつ変えずに答えた。さすがはまゆといったところか。

「別に来てくれなんて頼んでないよ。出てって」

「杏。ちょっとは冷静になった?」

「……」

「べつにまゆたちは、失恋で傷心する杏ちゃんを慰めに来たわけではないの。むしろ、その逆かしら?」

「うじうじしてないで働けって? 杏は今週オフだよ。だからこうやって部屋にいようと杏の勝手でしょ」

「アイドルやめるつもりなんでしょ」

 凛のストレートな言葉が図星に刺さって、思わず体が跳ねた。返事しなくても、それが返事みたいなものだった。

「杏がアイドルやってる理由は、もう印税なんかじゃないもんね。プロデューサーのため、そしてプロデューサーと一緒にいるため。でしょ?」

「だったらなんだよ。それがわかってるなら、何しに来たんだよっ!」

「つまらない勘違いを正しに来たんだよ」

「……は? 勘、違い?」

「とは言っても、プロデューサーが杏をフったことは間違いないんだけど。でも杏の様子からして、その結果に至る過程を、なにか勘違いしてるんじゃないかなって」

「勘違い、なんて……」

「杏ちゃんは、プロデューサーさんがどうして杏ちゃんの告白を受け入れなかったと思ってるのかな?」

「それは、杏がプロデューサーに迷惑ばっかりかけてるから……」

「愛想尽かされたって? プロデューサーがそう言ってたの?」

「言ってたもん。3か月前くらいに。まゆと話してるのを聞いちゃったんだよ」

「『杏のあの態度にはほとほと困り果てているさ。毎日こき使われてヘトヘトだ。勘弁してほしいよ』ってやつかしら? たしかそれくらいからだったわよねぇ。杏ちゃんがPさんから距離を置き始めたのは」

「その程度でプロデューサーに嫌われてると思うなんて馬鹿らしいよ。ねぇ?」

「ええ、本当に」

「そ、その程度って……!」

「その程度だよ。ねぇまゆ、私たちアイドルがプロデューサーにアプローチしたら、普通はどうなる?」

「やんわりと断られるわねぇ。それに たとえ風邪を引いても、家まで来てくれるなんてことはありえないわ」

「……え?」




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
71Res/56.23 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice