50:@[saga]
2013/06/15(土) 22:41:53.00 ID:rH3krSfi0
「というよりも、プライベートでプロデューサーがアイドルと一緒にいることなんて滅多にないんだよ」
「う、嘘だよ。だってみんな、プロデューサーと一緒に出かけたりしてるでしょ? ほら、かな子だって前に、スイパラに……」
「ふふ。あれはね、スイパラに行くのが目的じゃなかったの。あれは、プロデューサーさんにあることを教えてあげるついでに付き合ってもらっただけ」
「あることを……教える?」
「うん。ほんとはプロデューサーさん、びっくりさせたかったんだろうけど、教えちゃうね」
「かな子に教わるって、もしかして……」
「そう! おいしい飴の作り方! 杏ちゃんが今までの飴に飽きちゃったって言うから、それならってことでプロデューサーさん、自分で飴を作ろうって思ったんだって」
「―――」
「そういえば、紗南もプロデューサーになにか教えてたよね」
「確か、オンラインゲームのやり方、だったかしらぁ?」
「いつも朝7時ごろになると、事務所にいてもこっそりやってるんだよね」
「オンラインゲーム……朝7時って……」
「ありすちゃんと服を見に行ったこともあったんだっけ?」
「ありすちゃんの身長は、たしか杏ちゃんと2センチくらいしか違いませんでしたよねぇ」
「……」
「これでわかった? 私たちがプロデューサーとプライベートで出かけられるのは、プロデューサーが杏になにかしてあげたい時だけなんだよ」
「これでもまだ、Pさんに嫌われてるだなんて言っちゃうのかしらぁ?」
「じゃ、じゃあなんでプロデューサーは……」
「プロデューサーが、超がつくほどのマジメ人間ってことを考えれば、すぐにわかるんじゃない?」
「……アイドルと、プロデューサーだから……」
「そういうこと。まあ、そんなマジメ人間でも、杏のためなら仕事も全部放っぽり投げて駆けつけてくれるんだよね。……ほんと、かなわないなぁ」
「くやしいけれど、その通りねぇ」
「ここから先はプロデューサーと直接話しなよ。私たちのお節介はここまで」
「むしろ、これもプロデューサーさんが話すべきだったんじゃ……?」
「Pさんは、あれで照れ屋さんだもの。そういうところも素敵なんだけれど♪ うふ」
「な、なんでみんな、杏のためにここまで……?」
「杏ちゃんやプロデューサーさんが元気ないと、みんなも悲しいから!」
「そうだね。それにプロデューサー、仕事でミスしすぎだし。早く杏と仲直りしてもらわないとクビになっちゃうよ」
「まゆは Pさんが幸せなら、それがまゆの幸せだから」
「……みんな」
「ほら、泣かないの。これからプロデューサー呼んでくるから、ちゃんと身だしなみ整えときなよ。きっと特別な時間になるだろうから」
「うん……。みんな、ありがと。大好き」
泣くなって言われても、涙が止まらなかった。こんなに優しい仲間がいてくれたってことだけで、今までアイドルをやってきてよかったと思える。
泣きじゃくる杏を、やれやれって感じに微笑んで見守っていた3人が、杏の家を出ていった。下で待ってるっていうプロデューサーを呼びに行ったんだろう。
杏は3日前のことを思い出して、プロデューサーとどんな顔をして会えばいいんだろうと考えた。
けど、杏とプロデューサーの関係は、変にかっこつけるようなものじゃないはずだ。ありのままで、自然体で、いつもみたいにグータラしてればいいんだと思う。
だから杏は、顔を洗ったり髪を梳かしたりなんてこともなく、ただそのままプロデューサーが訪れるのを待った。
心はもう、決まっている。
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