過去ログ - 恵美「もし私が日本に馴染めなかったら」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/15(土) 22:42:50.50 ID:aEntuCFko
今でも思い出す、あの日の絶望。
彼女、勇者エミリアが元いた世界、エンテ・イスラから日本にやってきた日。

それは簡単な作業のはずだった。
父の敵である魔王サタンを倒すべく乗り込んだ魔王城での死闘の末、
追い詰められゲートに逃げ込んだ魔王サタンと悪魔大元帥アルシエルは弱っており、
エミリアは彼らにとどめを刺すべくゲートに入り追いかけた。
ゲートを出て魔王に追いつけばすぐに倒せるはずで、
そのあとは大神官オルバがゲートを開き再びエンテ・イスラに戻る。
それで全てが終わるはずだった。

それがどうだ。
ゲートを出てみれば魔王達の姿はない。
同行するはずだったオルバは、ゲートが閉じるのに間に合わずこちらには来られなかった。
さらに自身の戦闘力の源である聖法気が、そこら中に溢れていた
エンテ・イスラと違いこの世界では微塵も感じられず、補給もできない。
気が遠くなった。

考え、悩み、出した結論は、当面この世界で働き生きていくということだった。
エミリアの能力を持ってすれば、非合法な手段で衣食住の確保もできたが、
それは彼女の勇者としての矜持が許さなかったし、第一補給の当てもない聖法気を無駄遣いできなかった。
戸籍を作る際のみ催眠の術を使い、それ以降は日本の法律に従い生きてきた。

この国の情勢の把握、そして就職は難しくはなかった。
彼女は勇者としての能力で、ほぼ全ての生物との会話が成り立つ。
すぐにでも金が必要だった彼女は、人材不足が常のテレフォンアポインターとなった。
業務自体は前述の能力のおかげもあり、すぐこなせるようになった。

初めは、腰掛けのつもりだった。
この世界には聖法気同様、悪魔の力の源である魔力も存在しない。
弱った魔王達は力を回復することもできず、ゲートで別世界に逃げることもできず、近くで身を隠しているはずだ。
当座の生活をしのぎながら魔力の残滓を探せば容易く探し出せるはず。
ひょっとしたら残虐な奴らのことだ、残った魔力で騒ぎを起こすかもしれない。
どちらにしろ、打倒魔王は近い、そう思った。
いや、そう信じた。

それが、八ヶ月続いた。


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