過去ログ - 恵美「もし私が日本に馴染めなかったら」
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4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/15(土) 22:43:45.92 ID:aEntuCFko
帰宅途中で惣菜を買って帰った。
恵美は料理をしない。そんな手間をかける情熱はなかった。

シャワーを浴び、温めた惣菜を作業のように黙々と食べる。

恵美(……いつもどおり、美味くも不味くもないわね)

食事すら面倒だった。
栄養を摂らなければ死んでしまうから補給しているだけだ。
この世界、特に日本の食文化はエンテ・イスラに比べ遥かに発展しており、
最初の頃は美味しい食事に喜ぶ気力もあったが、最早それもない。

食事が済むと、寝るには早いが何もすることがない退屈な時間が訪れる。
何の当てもなく魔王を探し街中を歩き続ける習慣はしばらく前にやめていた。

期待せずテレビをつける。適当にチャンネルを回すが、どの番組にも興味は惹かれなかった。
チャンネルを回し続けると、時代劇が映りだした。その瞬間、恵美はテレビを消した。
彼女は時代劇が嫌いだった。

恵美(あんなふうに、分かりやすい敵がいて、正義の味方がそれをやっつけて)

恵美(それで何もかも解決なんて、都合のいい滑稽な話、現実にあればいいのにね)

敵の姿も見つけられない彼女にとって、その定番の筋書きは自分を馬鹿にしているようにも思えた。
結局、恵美は電気を消してベッドに潜り込んだ。
どうせいつも、気が休まらず遅くまで眠れないのだ。
ならば横になって少しでも体力を回復しようと考えた。

カーテン越しの月明かりだけがぼんやりと照らす部屋で、天井を見上げている恵美に表情はなかった。
泣くのにもエネルギーが要るのだと知ったのはこの世界に来てからしばらくしてからだ。
初めの頃は自分の不甲斐なさ、仲間達や故郷への望郷の念で毎日泣き疲れて眠っていた。

恵美(……エメラダ、アルバート、オルバ)

恵美(皆、今の私を見たら怒るかしら。……泣くかしら)

共に旅した仲間達。恵美にとって初めての戦友、そして親友と呼んで良い者達だ。
だが今では、その顔もぼんやりとしか思い出せなくなっている。
それだけ一人の時間は長すぎた。

結局その晩も、眠りに落ちたのは早朝近くなってからだった。


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