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過去ログ - 迷宮物語

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21:>>1[saga]
2013/06/24(月) 13:32:08.12 ID:TX+cAYCVo

　３０分後、エルリアは『迷宮』入り口に戦闘用装備には到底見えない、魔石で飾られたドレスに身を包んで立っていた。怪物が外に侵攻するのを防ぐ目的で配置されている兵士達にシャーリィに関しての続報がないのを確認してから『迷宮』に侵入る。

　外よりひんやりとした空気がエルリアを迎え入れる。『迷宮』1層はごくごく初心者の冒険者でもない限りは命を落とす事はほとんどない。怪物の数も非常に少なく、フロア面積もさほど広くない。出会い頭に魔物と遭遇する危険性を考えると、全力で走るわけにはいかないが、慣れた道のりを早足で２０層まで一気に下る事のできる魔導エレベーター前に到着する。このエレベーターはその昔、『迷宮』を調査した軍隊によって設置されており、今では誰でも使用できるようになっていた。ただ、一気に２０層まで下る為、このエレベーターを使う冒険者はそれなりに熟練している者に自然と限られているのだが。

　軽い浮遊感覚に身を任せると、そこはもう２０層になっていた。１層よりも温度は下がり、体感で１７度あるかないかといったところだろう。しかも周囲には怪物の放つ禍々しい邪気が漂い、腰に下げたショートソードをいつでも抜けるように準備をしつつ歩を進め、さらに下層へと続く階段へと赴く。運良く怪物と出会う事もなく目的の２３層へと辿り着く。途中、他の冒険者パーティーと何度か遭遇したので『妖精騎士』の姿を見なかったかを尋ねるが、返ってくる答えはいずれも芳しくはなかった。

「ん……っと」

　魔力感知を発動させてよく知るシャーリィの魔力を探しながら歩を進める。数回魔物の群れと遭遇しかけたが、別のルートを摂る事で戦闘を回避する。戦闘に掛かる時間を探索に回すべきだと考えた結果である。

　２時間ほどそうして歩いた頃に感知範囲の端に目的の魔力反応があった。

「見つけた」

　入り組んだ通路と玄室を記憶にある地図と照合しながら最短ルートで次々と踏破し、出没する怪物を次々と倒しながら目的の場所まで駆ける。危険を顧みずに駆けだしたのは、エルリアの裡に焦りが浮かびはじめていたからだった。魔力反応が薄いのだ。つまり、シャーリィの状態が芳しくないということでもある。できることなら『迷宮』の壁を打ち抜いて最短コースを取りたい程であったが、荒い石造りのような見た目とは違い、この『迷宮』を構成する材質は魔法や物理攻撃では傷ひとつすらつかない。

　怪我をしたのか、長時間張り続けている結界の為に魔力が著しく損耗しているのかは不明だが、あまり時間を掛けるわけにもいかないようだった。

　シャーリィが居るであろう地点まであと少しという扉を開けた瞬間、怪物のうなり声がエルリアの耳朶を打つ。しかもかなりの量だ。

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