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過去ログ - 迷宮物語

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61:>>1[saga]
2013/07/15(月) 23:59:21.48 ID:Gi/uj8Zzo

―　１年前『迷宮』二十九層　―

「うーん、ここじゃなさそうね」

「三十層まで行かなければ無理なのでしょうか？」

　広めの玄室の隅で結界を張った二人が地図を片手に周囲を見渡す。シャーリィは何度も地図と自らの記憶を重ね合わせて現在位置を確認する。

「やっぱりここだと思います。地図にも適合しますし」

「条件は？」

　玄室には十体以上の怪物の死体が転がっており、今しがたこの二人がこの玄室に巣食う怪物を駆逐したばかりだというのがわかる。その証拠にシャーリィが纏う鎧には返り血がべったりとついているし、セシルにも血糊がついていた。

「この玄室の魔物を駆逐すれば『出て』くる筈ですけど……」

　二人が二十五層で手に入れた鍵が伝える条件はこの玄室で魔物を掃討すれば宝物が出現するという事のみだった。難解な謎解きのような要素はなく、人手も必要ではなかったので二人で来たのだが。

「ハズレ、でしょうか？」

「何とも言えないわね。条件に適合してから宝物が出てくるまでの時間って一定じゃないしね。私の知り合いだけど二時間待ってやっと出てきたって言ってたわよ」

「じゃあ待つしかないですね」

　鎧に付いた血糊を少し気にしながら壁にもたれかかる。敵を掃討したとはいえ、いつ姿を顕すかわからないので決して気は抜かない。セシルもタバコに火を付けながらも周囲の様子を絶えず伺っている。

　３０分が経過した頃、突然玄室の中央に長箱のような物が出現した。

「やっと出てきましたわ！」

　周囲に魔物の気配がないのを何度も確認してから結界を解いて宝箱らしき物に駆け寄る。

　追いついたセシルがそのまま箱に近づき、罠などがないかを確認。箱の長さは二メートル近くあり、奥行きや高さも今まで見た事のないような大きさだった。

「それにしても大きいわね……っと、毒霧のトラップね」

　鍵穴の奥に毒の入った瓶が仕掛けられており、確認せずに鍵を差し込むと仕掛けが作動して毒が噴射されるという罠が施されていた。単純な罠なので手持ちのツールで罠が作動しないように仕組みを解除し、シャーリィにうなずいて返す。

「では、開けます」

　ゆっくりと鍵を差し込む。何度経験してもこの瞬間に勝る楽しみは感じた事がない。一種のギャンブル性にも似た感覚が二人を包み込む。

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