136: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/07/31(木) 22:55:38.13 ID:DqCXhqTW0
『貴方のきょうだい』と、少女はそう言った。
『姉弟』『兄妹』凉一には姉も妹もいない。
まるで要領を得ない……その真意を問おうとした凉一は少女の右目に釘付けになった。
紅い光を宿したその瞳は吸血鬼の証。
「貴方は夜の住人……昼の世界には戻れない」
「キミは……!?」
その時、凉一の質問を遮るように遠くの空で雷光がひらめき低い唸り声を轟かせた。やがて凉の額を小さな水滴が打つ。
「私は茅(かや)……貴方と同じく、貴族マリアヴェル様に己の血を捧げた元・人間……」
それを皮切りに辺りにポツポツと雨が落ち、瞬く間に地面を湿らせていった。それでも凉一は紅い瞳から目を離せない。
「貴方は今の出来事を忘れるわ」
「ま、待って!」
「また逢いましょう」
辺りは静寂に包まれた。
遠くの雷鳴も雨が地面を打つ音も、蛙の鳴き声も聞こえない。
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