80: ◆.g97gKoujg[saga]
2013/07/21(日) 23:22:18.17 ID:mUvYFLfw0
結束バンドから解放された恭兵は不貞腐れたように車外の流れていく景色を眺めていた。
「恭兵、肩見せてみ……革ジャン脱げよ」
「いい……大した事ねえよ」
キリコは(キリコが撃った)傷口を診るため、上着を脱がせようとしたが恭兵は拒否する。
「右腕上がんねえだろ? 弾丸(たま)残ってんだから」
キリコが使用した弾丸はホローポイント弾。命中したら貫通せず、対象の体内で弾頭が潰れて効果的にダメージを与える。
痩せ我慢をしているが恭兵は想像を絶する痛みにさいなまれているだろう。キリコは強引に恭兵の上着を剥ぎ取って背中を向けさせた。
「ん……まあ、とりあえずは応急処置でいいか。戻ったら弾丸抜くよ」
恭兵に流れる人狼の血のお蔭なのか出血はそれほど酷くはない。応急処置を始めるキリコに背中を向けたまま恭兵は聞いた。
「あの時、俺を見棄てたんじゃなかったのかよ?」
公園で命令を無視してキリコに背後から射たれた時、無防備になった恭兵は敵である茨木に殺されてもおかしくはない状況だった。
「ああ、見棄てたよ」
事も無げにキリコは答えた。キリコに背を向けた状態で治療を受ける恭兵には、彼女の表情を確認する事は出来ないが想像は出来た。
キリコはとてつもなく冷酷な笑みを浮かべているに違いない――。
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