過去ログ - 恵美「ホームレス拾って洗ったら魔王だった」
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3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/24(月) 23:18:15.65 ID:axQkyWQVo

ふと、1年前の顛末を思い出し、私は一人言を呟いた。
宿敵魔王を追い、ゲートを抜けた先は聖法気も魔翌力もない平和な世界、日本。

もちろん魔翌力の気配なんて微塵にも感じない。
自身の聖法気も著しく弱体し、早々に魔王との決戦を諦めた事は今や笑いの種である。

最初は勿論大変なんてもんじゃない経験をしたけど、
今となっては私も何とか社会に順応して、この日本で暮らしている。
友達も出来て、何かと充実した日々を送っているのではあるけど
仕事に追われ、中々時間を上手く取れないのもまた事実。

はっきり言って魔王の捜索は、二の次になっていた。

何よりもオルバが間に合わなかった事が何よりも痛かった。
増幅器もなく、単身でゲート術で操れるのは大神官であるオルバのみ。
彼がいない時点で、言わば異世界難民になるのは当然の事だったのである。

恵美「まぁ、今更悔いても仕方ないわよね…。あら…。雨?」

先程から怪しい気配だったが、とうとう降り出した。
しかも雨足はすぐに強くなり、今日の天気予報の7割に掛けた自分の愚かさを呪う。
こんな日に限って折り畳み傘もない。

丁度信号の脇に大きな木があって、私はその下に駆け込んだ。
ハンカチを広げて頭を覆うが、葉の間からポタポタと水が垂れる。
どうやら気休めにしかならなそうだった。

どこかコンビニで傘を…。そう思って私は辺りを見回す。

恵美「……?」

恐らく閉店してしまったであろうテナントの軒下。
閉まったシャッターの真下、誰かが座り込んでいた。

体育座りで顔を覆っている。
着ている服も小汚く、靴はボロボロ…。行き場のないホームレスだろうか?
顔をよく確認出来ない…。が、その風貌は若かった。
よくガード下で、ダンボールで寝ているような中高年とは違うのは明らかだった。

恵美「…若いのに大変よねぇ」

いくら豊かに見えるこの日本でも、生活に苦しむ人はいる。
私もあの時、一歩でも間違えていれば今の生活はなかったのかもしれない。

そんな思いがふとよぎるが、いかんせん私は日本に慣れすぎていた。
迫る出社時間には逆らえず、信号が青になった瞬間
私は向かいのコンビニに、ビニール傘を求めて駆け出す。


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