10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/06/27(木) 22:37:57.98 ID:Mi8zjoZEo
「二人とも、よく思いつくな」
凝り固まった頭ではその回答へ到達できそうにない。
改めて二人の若さを感じるとともに、俺も歳をとったかなあ、とひとり息を吐いた。
「でも、鏡色って何なのでしょう?」
頬に指を当てて、ゆかりは呟く。
「…それもそうですね」
どうやら翠にとっては盲点だったらしい、遠くへと視線を遣って乾いた笑いをあげた。
鏡色、か。
それを問おうと思えば、結局雨の色もどうなのだという疑問に行き着くのだから、堂々巡りと言えばそこまでである。
雨は誰にとっても雨。
だが一方で、見る人やその時の状況によって表現は全て違っていく。
翠はそれを目の前の景色をありのまま映し出す鏡、という風に捉えた。
ありのまま映す、という表現をそのまま伝えるには……。
再び沈黙が訪れようとしたその時、不意に事務所の中に電子音が響き渡る。
「Pさんの携帯では?」
「ん…ああ、俺のか。悪い」
各々所持している携帯のメロディはもう知っているのだろう、翠がそう指摘すると、ソファーの窪みにこぼれ落ちていた携帯を手に取る。
もう何年も使用している、古くて傷だらけの二つ折りの携帯電話のサブディスプレイには、よく行くレストランのメールマガジンのタイトルがぶつ切りで表示されていた。
この携帯電話も年季が入ってきたし、そろそろ買い換えるべきだろうか。
今を生きる人間として、例え電話とメールしか使わないとしても最新の物に触れることで知識も更新出来るかもしれない。
当然、困ったことが無い訳ではなかった。
この前遭ったことといえば、他のアイドルとロケに行った時に観光ついで写真を取ろうとしたら、俺の携帯電話では画質が悪すぎて気落ちした事が――。
「……ああ」
そういう手段もあるのか。
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