過去ログ - 上条「俺は、美琴が好きなんだ」フィアンマ「……」
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◆2/3UkhVg4u1D
[saga]
2013/06/30(日) 22:04:36.76 ID:XcxA+T7q0
生まれた時から、暗闇の中に放り出された。
皆に見える筈の世界は、俺様には見せてもらえなかった。
父親は産まれる前に消えていて、母親は俺様を産んだ日に死んだ。
そうして物心がついた頃、俺様は既に塔の上へと幽閉されていた。
『神の如き者』の適性。
救世主の素質。
数百年振りの『右方のフィアンマ』の到来。
難しい事を沢山言われたが、何となくは理解した。
産まれながらの体質によって、エリートコースに乗った訳だ。
そこに嬉しさはなかった。
ここにあるのは、拘束と、退屈と、魔道書だけ。
光を持たぬ俺様にとって、狭い室内はそれ程窮屈には感じなかった。
外に出たところで、危険な目に遭ってしまうだけだ。
そう自分に言い聞かせ続け、勉強だけを続けた。
「……そとは、たのしいのか?」
問いかけたところで、返ってくる言葉はない。
俺様の知り合いは非常に少なくて。
人が訪れてくる時間も、限られていた。
今が夜なのか朝なのかもわからないままに、呟く。
手探りで窓を探し、少しだけ開けてみる。
飛び出す事も、飛び降りる事もままならない狭さは、換気の為だけに設置されたものだ。
「…いっしょう、でられないのかもしれないな」
それならそれで、仕方がない。
どうせ何も見る事の出来ない世界など、知らなくてもいい。
涼やかな風を堪能した後に窓を閉めて、自分にそう言い聞かせる。
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