過去ログ - 上条「俺は、美琴が好きなんだ」フィアンマ「……」
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◆2/3UkhVg4u1D
[saga]
2013/07/29(月) 21:08:54.25 ID:c39lyfSe0
後にオティヌスと名乗る少女は、劣等感に苛まれていた。
幼い頃から兄弟と比較され、学校に入れば同年代と比較され。
たった一度の成功体験すらなく、何を思うでもなく過ごしていた。
誰かに手を差し伸べたことも、差し伸べられたことも、そのような機会にも恵まれず。
『……む…』
そんな時に、幼い女の子と出会った。
盲目だった彼女は、目の前に落とした小さな石一つ拾えずにいた。
周囲には人がおらず、彼女を助ける人はいなくて。
『……これか』
『あ、…かんしゃする』
石を拾って渡すと、彼女は嬉しそうにはにかんだ。
その笑顔は愛らしくて、人に安堵を与えるものだった。
息が荒く、その頬は赤かった。照れではない。
『…飲み物が必要か』
『えあ、』
缶ジュースを開封して、手渡す。
きょとんとした後、幼い少女はちびりと飲み始めた。
初めて飲んだ、と嬉しそうにまた笑ってみせて。
それから、近づいてきた聖職者らしき男に手を引かれていった。
最後に見えたその表情には、怯えと絶望しか見えなかった。
助けたい、と。
救いたい、と。
守ってあげたい、と思った。
産まれて初めて、誰かを助けることを教えてくれた、あの子を。
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