過去ログ - 1レスでアイマスSS
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3: ◆NbftaqZN9I[sage]
2013/07/05(金) 20:25:55.92 ID:Tz9CSvcy0
【雨の中で】

ざあざあと降る雨が、テレビ局から出たボクを迎えた。
天気予報は晴れだったのになぁ……なんて思いながら、傘の無い現状にうんざりする。

「はぁ……梅雨の天気予報なんて当てにするんじゃなかった……」

愚痴っても雨がやむ訳もなく、依然として道路は白く煙っている。
どうしようかな。このまま走って帰ろうか?
水も滴るいい女、とか言うし、たまには悪くないのかも。
そう思っていると、向こうからオレンジ色の傘がやってくるのが見えた。
『いいなぁ、傘があって』と横目に見ていたけれど、オレンジの傘はボクの目の前で止まった。

「あ、真さん。やっと見つけました」

「やよい?どうしたの?」

傘から現れた明るいツインテールの女の子――やよいが、そう言ってボクに笑いかけてくる。
今日は確か、こっち方面の仕事場じゃなかった筈だけど……

「真さんが困ってるかな―って。だから傘持ってきたんです」

やよいが右手を前に出して、可愛らしいピンク色の傘を差し出してくる。
ボクは嬉しくなって、ついやよいを抱きしめた。

「うわぁ……!ありがと、やよい!助かったよ!」

「はわっ!?真さん、苦しいです……」

「おっと、ごめんね?嬉しくてつい……」

やよいを解放して、両手を合わせてごめんなさいをする。
怒ってはいなかったみたいで、すぐに許してくれた。

「大丈夫です!それより、一緒に帰りましょう?」

「そうだね。それじゃあ、ありがたく借りるよ?」

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

自分にはちょっと似合わない傘を広げ、やよいの前を歩きだす。
雨はしとしとと降り続けているけれど、さっきよりかは小振りだった。
しばらく無言で歩いていると、やよいが不意に。

「なんだか、こうしていると真さんがお姉ちゃんになったみたいです」

「お姉ちゃん?」

「はい!頼りになるお姉ちゃんって感じです」

「お姉ちゃんかぁ……」

思えば、ボクをお姉ちゃんなんて言ってくれたのはやよいが初めてだ。
亜美も真美も、やよいより年下の筈なのに、お姉ちゃんなんて言ってくれた事はない。
千早には『お姉ちゃん』ってつけてるのになぁ。

「どうかしましたか?」

「いや……ただ、ちょっと嬉しかっただけだよ」

歩きながら、そう答える。
ふと、手を繋いでみたくなって。

「ねえ、やよい。手、繋いでもいい?」

「はい?いいですけど……」

「じゃあ……」

そう言って、やよいの小さな手を握る。
なんだか、本当の姉妹になったような気分。

「温かいです」

「ボクもだよ」

やよいの笑顔に、笑顔を返す。
結局その日は、事務所までずっと手を繋いだまま帰った。


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