106:とある限界集落の会議室1/2(お題:限界集落) ◆d9gN98TTJY[sage]
2013/07/25(木) 14:09:15.37 ID:GvakuxCp0
「最近の若いもんは……」
会議の席で、長き沈黙を破って誰かがそう呟いた。
その村の誰もが、それを言うべきではないと知っていた。
知っていて尚、そう呟いてしまう気持ちには共感していた。
老々介護。放置老人。限界集落。
その全てに心当たりがあり、その全てが対策だった。
人手が足りないからいざと言うときは老人が老人の相手をする。
人手が足りないから常日頃のことは老人は一人で対処する。
そして人手が足りないままだから、集落は限界に近づく。
死ぬことは定めだろう。恐れはあるが覚悟もある。けれど無為に失われる事への覚悟
までままならない。
助けてくれとは言わない。
葬儀の手配をしてくれる者が欲しい。
この地で家を買い。この地で墓を買い。この地に住まう。
例え諸々の文化が尽きようと、次の世代がこの地の土で育った作物を|食《は》むのならば、
それはこの土地を継ぐことと同義だといえよう。
そう、年老いた世代の見解は一致している。
だが、来ない。
交通の便が悪いのだ。
流通が滞っているので、生きる為に作付けに終われる日々を送ることになる。
病で死するは定命の者の定めと言えど、治せる可能性が日々高まっていく中で病を定
めだと達観できる若者は多くない。|畢竟《ひっきょう》、病院のない村には若者は来ない。
気合でどうにかなるだろう。そんな根性論、トレーニング方法から敷地、努力の成果
を見せる舞台にルールで定められた範囲での採点以外では、過程も終わりも答えもない
人生にまで求めるものではなくなっている。
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