107:とある限界集落の会議室2/2(お題:限界集落) ◆d9gN98TTJY[sage]
2013/07/25(木) 14:10:10.94 ID:GvakuxCp0
舞台も何もない。ルールも何もない。永遠に根性だけで筋トレをしていろと言われ、
一体何人がそれを成し遂げることができるというのか。
根性にひとかたならぬ自負を抱いてこの村にやってきた者も、この村で日々を過ごす
内に少しずつ元気が失われていき、そして「もう限界だ。もう無理だ」と言うのだ。
「まあ、仕方ないさ」
誰かがそう言った。
誰もがそう言うしかないのだと分かっていた。
「他に特色はないんだ」
「無理にしても続きはしない」
「だからこの村のままの姿でいるしかない」
「それが若いもんに辛い思いをさせるのだと言うのなら……」
口々に挙げられていく意見は、詰まるところこれまでの会議で何度も語られてきたこと
の焼き直しだった。
「もう少し、求めないようにするしかない」
そして当然の如く、結論もこれまで通りと同じになる。
だが、それは前進の為のもののつもりであった。
「もう少し老々介護の手順を見直そう」
若者が重責でつぶれないように。
「一人で行う日常の作業を見直し、行動の効率を上げ、負担を減らそう」
若者が労働でつぶれないように。
「これまで以上に限界に挑戦しよう」
そして若者の手本になるように。
会議に集った老人たちは、笑顔でバルクアップされた筋肉をヒクつかせ、お互いにまだ
まだ現役なのだと行動で示す。
村は貧しい。
だから人力で輸送し、人力で農作業を行い、人力で家を建て、人力で墓石を削りだし、
人力で熊などの害獣を追い払い、人力で道路の改修を行ってきた。
若者がきても介護で忙殺されることがないように、日々ボディバランスを気にして生き
ていこう。最近の若者はか弱い生き物なのだ。
そのアグレッシヴでマッシヴな言動こそが若者が逃げ出している要因だとは気付かず、
彼らは朗らかに笑っていた。
人体の限界に挑戦し続ける集落がそこにあった。
END
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