137:誰か俺にも糖分を下さい1/1(お題:シロップ) ◆B6DgJzOWA.[sage]
2013/07/26(金) 09:13:06.18 ID:QxVWVSlk0
「低血糖、お前が?」
「……なんでそんなに表情にまで疑問符つけてんだ。俺が低血糖症って言われたのがそんなにおかしいか?」
谷口雄輔のそういうところは美徳でもある。が、ダメなところでもあると思う。
自分でも大学の学食で切り出すに特別に適した話とは違うと分かる。
けど、それほどダメな話でもなかったはずだ。
「あんまり聞いたことない話だったし……」
珍しい症状なのは分かってる。俺も倒れて担ぎ込まれた病院でそう診断された時には思わず耳を疑った。
「……それにお前、今飲んでるそれ、ブラックやん」
「これでも充分に甘ったるいからな……」
それでも、今、この口で言ったこと。それを理解してもらえると思って口にしたんだ。
仮にも、どんな時でも一緒にいようと誘ってくるような、親友と呼び合える仲なんだからな。
「聞いた話だけど……」と、斜め向かいから丹生|灯《あかり》が話に入ってきて……「高い血糖値を抑える働きが働き
すぎてもなるって聞いたけど……。きっと違うみたいね」
と、決め付けた。
実はそれで合ってる。
「甘いの自体は好きなんだよ」
直接的なものではないが、摂取しすぎたからこそというのは間違ってない。
だから少し減らしたいという気分なんだが……。
「備え付けのシロップをもってこよっか?」と、丹生は斜め上の方向に気を回すので、
「いや、もう甘いから」とすぐさま断った。
「そうだったの? 気付かなかったわ」
「原内はここ最近いっつも眉間に皺を寄せてコーヒー飲むからな。ぱっと見て分からないのも仕方ない」
雄輔は朗らかに笑いつつ、そう彼女をフォローして……「それよりももっと俺を見てくれてもいいんじゃない?」と、
いつものように口説いた。
それに対して、丹生は「やだもう」と満更でもないどころか全力で甘えた声を出して、これまたいつもの様にしなだれ
かかった。
いつも通りのことだが、いつも通りだからこそ俺はそこで限界を感じて……
「見てるだけで無糖のコーヒーがシロップを入れ過ぎたかのように甘ったるく感じるんだよ、このバカップル!」
キレた。
キレたままに、なんで彼女ができたのに俺を誘うんだよとか。なんで俺がいるのに普通に甘えてんだよとか。勢いの
ままに言いたいことはいろいろあったが……
「俺にも誰か紹介してください!」
単に俺は俺の分の糖分が欲しいだけだったらしい。
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