過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)4
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23:2/2 お題:>>20 後段
2013/07/15(月) 15:56:56.00 ID:KpORzsSjo
 このさほど広くない部屋において、彼女は星辰を定め、大地を作る事が出来た。彼女が物理の法則
であり、正義であった。彼女の寝ていたベッドも宙に浮いて、三次元的な配置の下で踊る彼女のぬい
ぐるみや洋服達が最も美しく見える位置へ動いた。逆さまになっても彼女はベッドにぴったりとくっ
ついていて何の危険もなかった。
 どんどん彼女はジュースを飲んで行く。もう半分くらいは飲んでしまったろう。飲んだ量に比例、
あるいは数乗に比例して、音楽と踊りと曲技とは激しさを増していった。もはや夢うつつの判別が着
かなくなりつつあったが、彼女は、初めの配置に、もどったこと、つまり、ベッドが地面について、
ぬいぐるみ達が地面に立つようにして踊っている事に気がついた。
 そう、今なら一緒に踊ることができるのだ。彼女の前にいる彼らと。「踊りを見るのよりも、一緒
に踊る方が楽しい」なんとなくそう思った彼女は残りのジュースを一気に飲んでから、傍らの杖を取
るのも忘れてベッドの傍らへおりようとした。彼女の忠実なぬいぐるみ達もそれを迎えに行った。

 金色の髪をした美しい従者は黙々と主人の部屋を片付けていた。所用から帰ってくると、主人の部
屋の中の本やぬいぐるみ、クローゼットの中の物、全てむちゃくちゃに散乱していたのだった。その
中心で泣きはらした目で眠っていた主人をベッドに戻してから彼女は片付けを始めた。

「ただいま」
 そう言って別の従者達が帰ってきた。彼女達は別の所用で出ていたのだった。すぐに出迎えなかっ
たので、奥まで来た彼女たちは部屋の有様を見て、何があったのかを聞いた。金髪の従者は、どうも
ジュースに混ぜてお酒を買ってきてしまい、それを飲んだ主人である少女が酔ったあげく自分の境遇
を儚んで暴れたらしいと推測を述べた。主人はうつぶせにベッドの近くに倒れ、両腕を握りしめてい
たのだから、足に障害があるせいで、立とうとして立てない自分に絶望したのだろうと思ったのだっ
た。不幸としか癒えない境遇でありながら、いつもほほえみを浮かべていた優しい主人にもこんな面
があったのかと思うと、金髪の従者は、主人に寄り添い切れていなかった自分を恥じた。
「ぜってーに手伝わないからな」
 背の低い、少女に見える赤髪の従者が吐き捨てるように言った。その責めるような調子も、金髪の
従者にとってはどこか快かった。実際に、悪いのは全て彼女だった。桃色の髪をした女の従者も、壮
年の男の従者も内心は同じだろうが、あえて何も言わなかった。ただ、彼らは皆、神が存在するとす
れば、その無慈悲をなじっただろう。どうして彼らの主人に過酷な運命を課したのか、と。
 次の日に一日中二日酔いに苦しんだ主人は何も覚えていなかった。



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