57:組長(お題:二代目)1/4
2013/07/18(木) 21:57:40.15 ID:/9FKMm/Go
病室の中ではピッ、ピッ、という音が響いている。親父がまだかろうじて生きている証だ。だが
そこにいる人間は皆沈黙していた。
親父が倒れてもう3日。当然最高級の医者を用意し、万全を尽くしてはいるが、実際もう長くは
ないだろう。周りを囲む組員たちの顔にも絶望しかない。
突然携帯電話の音が鳴る。俺の携帯だ。ディスプレイには若い組員の名前が表示されていた。
「なんだ」
「大変です! 今情報が入りまして、中村組の奴らがシマの店荒らしてるって!」
「わかった。すぐいく」
俺はそれだけ言って電話を切った。
「実は中村にシマが荒らされてるらしいんだが……」
「で、でも……親父が……」
この中で一番若い横山が言う。
「安心しろ。俺が親父を見とく。まあ、あの親父のことだから、まだまだ大丈夫だ」
「わかりました。すぐ帰ってきます」、
そう言って倉田がすぐに立ち上がった。組で俺に続きナンバー3の倉田が立ったのだから他の連中は続くしかない。
「じゃあ、親父を頼みます」
倉田がそう言って病室を出て行き、男たちはそれについて行った。最後に横山だけは、こちらを心配そうに見た。
「大丈夫だ」
俺が言うと横山は一度頷き、病室のドアは完全に閉められた。
念の為に足音が消えてから一分待った。
これでもう俺とこの死にかけのじいさん以外は誰もここにはいない。この中で何が起きても誰も気づきはしない。
しかしいいタイミングで襲ってくれた。中村組万々歳だ。さあて後はこのじいさんの酸素供給マ
スクをカポッと外せばじいさん昇天。組ナンバー2の俺が順繰りで組ナンバー1つまり組長! いやー苦節20年。ようやく俺にもツキが回ってきた。きっと中村組は神の使いかなんかだったんだ
ろう。今まで頑張ってきた俺に神がご褒美をくれたんだ。
親父はぐっすり寝ている。特に苦しんでいるようでもないがもう心臓も弱っていて医者によると
「そろそろ」らしい。つまり今この瞬間死んでしまってもまったく不思議ではない。
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