過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)4
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640:微笑を絶やさぬ天使(お題:背中の翼) 1/2◇aMKPrpwO0 [sage saga]
2013/09/14(土) 02:45:57.96 ID:3o/dT8Ct0
 この教会へ連れてこられた時の一度しか見ていないのでよくわからないのだが、そのときに眺めた風景の賑や
かさから察するに、いま少女が身を寄せている教会は、それはそれは大勢の人間が集まっている村に建っている
ようだ。昔、両親から聞かされていた街という場所ではないかと少女は考えている。
 ともかく少女は教会へ連れてこられ、大勢の大人に品定めされ、そして今後の生活についてこう言われた。
「天の御使いにふさわしくあれ」
 それから少女は「教育」を施されるようになる。
 人前では常に微笑んで他の感情を表すな。姿勢を正しまっすぐな姿を決して崩すな。とにかく、天の御使いの
完璧な姿を体現し信者にその威光を示せ。
 あまりに厳しいそれに無理だと泣けば罰を受けた。
 従うより他に道はない。だから少女は生きる為にそれらを受け入れ、そして教会の望む通りに生きた聖像とし
て今日まで振舞ってきたのである。


 教会の人間たちの手によって彼女の姿は整えられている。伸ばした髪は香油で手入れされて艶をもち、肌は丁
寧に磨かれ滑らか、着るものは清潔でな純白のローブ。とりわけ翼は丁寧に扱われ礼拝の度に必ず羽の列を整え
られる。
 少女自身は普通の顔立ちの娘だったが、磨かれた姿を信者たちは美しいと称え彼女を崇めた。
 だが、その賛辞が何になるというのだろう?
彼女を前にした大勢の人間が喜び安らぎを得る姿を見るのは、無理やり押し付けられた仕事とはいえ確かに嬉し
い。だがそれ以外のときはどうだろうか? こうして逃げられないように閉じ込められ、ただただ一人ぼっちで
時が過ぎるのを待つだけ。
 外へ出る自由はない。
 少女は一度も飛んで見せたことなどないというのに、教会の上層部は彼女が空へ逃れてしまうことを恐れてい
たのだ。


 少女は鉄格子の空を舞う鳥を見て考えた。
 きっとこの背の翼は、飛ぶためではなく縛られるためにある翼なのだと。
 それはとても物悲しくなる考えだったが、少女は決してそれを顔には出さなかった。


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