740:道祖神のお導き(お題:鏖)6/11[saga]
2013/10/13(日) 08:40:58.00 ID:t/0x6c1+o
老人はやけに庄助を気に入った様子で、もてなさないと気が済まないとでも言わんばかりだった。飯を食ってか
らでも遅くあるまい、と庄助はあっけなく老人に付いていくことに決めた。
朽ちかけた蔵のような建物が老人の家だった。今にも風に吹かれて崩れそうな有様に、庄助はおっかなびっくり
家の柱をつついてみたりするが、流石にその程度でぐらついたりはしなかった。
「じいさん、なんでこんなにおんぼろなんだ。というか村の家みんなぼろぼろじゃあないか」
「ほれ、台風があったろう。あれじゃ」
「へえ、よく保ったもんだ。それより雨で炭は駄目になんねえのかい」
「あー、大丈夫、大丈夫じゃ。でかい釜の中に入れときゃあ平気なもんだ」
庄助はもう平気で老人に話しかけていた。というのも、この規模の村なら、おそらく賊による虐殺などにはなら
ないと予測したからだ。ここの村人全員が集まっていたって、明らかに山賊一味には敵わない。圧倒的な戦力差を
前に、冷静な判断力があれば村人は唯々諾々と作物を差し出すはずである。抵抗しなければ、この老人も殺される
はめにはなるまい。ちょっと不幸な目に遭うだけだ。そう思うと、庄助は気負った気持ちが軽くなった。山賊に属
していた所で、殺しが好きなわけではない。
鉄砲玉として駆り出されたけれど、どうやら死なずに済みそうだし、村を襲うことになるが、皆殺しにはしない
で済みそうだし、飯は貰えるしで、どうやらツキはまだ庄助の味方らしい。そう思うと、庄助はぐっと気が楽にな
り愉快な気持ちになった。
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