過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)4
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743:道祖神のお導き(お題:鏖)9/11[saga]
2013/10/13(日) 08:44:11.94 ID:t/0x6c1+o
「なんだ・・・これ・・・うっ」
 異臭が鼻を突く。吐き気と頭痛を伴う不快感が肺腑から全身に広がっていく。脂汗が吹き出し、庄助は無意識に
後ずさり、釜から離れる。しかし、視線だけは釜の中に釘付けになったままだ。
 そこにあったのは炭、ではなく、骨だった。一度だけ飢饉の時に見たことがある・・・人骨。火力が足らなかっ
たのか、肉らしきものが焦げ付いている。一人二人ではない、十、二十という大量の人骨が釜の中に収まってい
た。
 手や足が自分のもので無いように力が入らなかった。刀を取り落とし、足ががくがくと震えた。先ほどまで腹一
杯食べたものをすべてその場に吐き出してしまう。庄助は涙を流しながら芋だけ拾って駆け出し、山へ入ってい
く。村から一刻も早く離れたかった。
 いつの間にか日は完全に沈み、山の中は真っ暗だった。冷たい風が身を切るように吹き付ける。庄助は途中なん
ども転びながら、やっとの思いで道祖神の分かれ道までたどり着いた。
 汗が噴き出し、息も絶え絶えだが、混乱はようやく収まって来た。
 あの人骨の山は一体なんだったのか。あれではまるで、あの釜が火葬場のようではないか。
 すると、昼に庄助が通って来た山道の方から提灯の灯りがやってくるのが見えた。人骨を見た後のせいか不気味
な火の玉のようにしか見えなかったが、提灯を持っているのは、山賊の仲間の一人だった。年も近く、同じ天涯孤
独の孤児だ。つまり、自分と同じ、良いように使われる下っ端の一人である。
「ん?・・・おう、庄助まだこんなとこにいやがったのか。迎えに来たから、早く帰ろうぜ。親方が、まだ帰って
こねえなら村まで助けにいくとかなんとか言ってたぞ」
「ああ、清八・・・悪い」
「なんだ、ひどい顔色じゃねえか。何かあったのか?」
 覗き込むようにして清八がじろじろと庄助の顔を見る。



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