過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)4
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95:欲深い俺が歴史戦略ゲームの世界に迷い込んだ 2/3(お題:欲深い) ◆d9gN98TTJY[sage]
2013/07/24(水) 13:49:28.17 ID:MyiDTiqD0
「あ? 離れたところで開発すると南の奴ばらの動向が懸念されるだと?」
 意見は聞いてやると通達してるとこういう愚にもつかない怯えに満ちた質問が舞い込ん
できたりする。
 この時代の常識を、文字の上ではなく実感で理解できていなかったときは重宝したが、
今となってごくごくたま〜に砂の中から砂金が見つかる程度の価値しかない。それでも、
情報は金も同然だから大切にはするが、砂のような雑多な質問には腹が立つ。
「いいか、一から十まで説明するから良く聞けよ?」
 それでもこうして逐一教えるのは、これもごくごくたまにの砂中の砂金レベルのことで
はあるが、頭のできのマシなヤツが見い出せたりするからだ。
「俺達は山の奥地で貧しい。あいつらは平地で豊かだ。だが、だからこそ俺達は頑強で、
あいつら脆弱だ。結束も、一村一丸となってようやく食えてる俺らと違って、あいつらは
各々が好き勝手やってもそこそこ食える。つまり、こっちは全員が動くがあいつらは少し
しか動かないし動けない」
 知性の働きを瞳に見せるやつがいるかどうかじっくりと陳情に訪れた一人ひとりの目を
覗き込む。理解しているかどうかあやふやだが、とりあえず異論はないようだ。
「で、ここより平地に近い西の尾根だが。平地に慣れた者共に夜討ち朝駆けは困難だろ。
なら日中からの行軍になるが、日は西に沈むもんだ。夕日を背中にするのと夕日に目が眩
むのと、どっちが有利か少し考えたら分かるだろ」
 ていうか少しは考えてから来いよ。ゲームの通りにはいかないってのは分かったが、こ
れを理解するのには地動説も孫氏の兵法もいらんだろ。農民の経験則と知恵だけでいい。
「なるほど、では開墾に取り掛かるのは集落の更に西、南の奴バラによく見えるよう、尾
根の突端に向けて畑を広げるのですな?」
 おう。脳内で愚痴ってたら、しっかり俺の意図を察してくれたヤツがでてきたわ。
「分かってんじゃねーか。開墾は部屋住み連中の未来で、くそ貧しい家での更なる内紛を
避ける措置で、……おまけで南の平地連中への罠だ」
 なんと! だの、そうであったか! だのとざわざわ五月蝿く盛り上がってきた中で、
俺は開発提案をしてきた顔を見てみた。見覚えはある顔ではあるが、誰だ。
「お前は……村の北で、山中深くに入ってよく芋を掘ってる奴だよな。名前は何だ?」
「はっ。てつと申しまする」
「よし、お前は今後山中鉄之助と名乗れ。漢字はこう書け。確たる身分はまだやれんが、
西の攻略が済めばお前の家名を村の名前にしてろ」
「ありがたき幸せでござじゃります」



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