963:私(お題:久方ぶり)1/7
2014/01/22(水) 14:59:39.59 ID:9MEAyqUio
声が聞こえる。誰かの話し声。どこかで聞いたような声。意識がだんだんはっきりしてき
て、言葉の意味がわかるようになり、誰と誰がしゃべっているのか、思い出す。
私は目を開けた。
「明美!」
そう、これは優子の声。もう一人は優子の隣の美幸。
「大丈夫? 痛いところ無い?」
「……うん」
痛いところ? どうやら私は何かで怪我をしたらしい。
「明美もしかして覚えてない? 階段から落ちたんだよ!」
……階段。思い出そうとするが何も出てこなかった。教室を出たところで記憶が止まっている。
「今お医者さん呼んでくるね」
そう言って美幸は出て行った。
「ああー、よかった。このまま目覚まさなかったらどうしようと思った」
「私……どうなったの?」
「教室出て下に降りる時に階段で躓いたんだよ! 慌てて先生呼んで、救急車呼んで、その
間ずっと意識なかったから怖かったー」
「それで、優子病院についてきてくれたの?」
「そうだよ、当たり前じゃん!」
「……ありがとう」
その時病室の戸が開いた。美幸と、その隣に若い医師が立っていた。医師は私の前に座ると、
何か書類を載せたボードを膝に置き、ボールペンを内ポケットから取り出した。
「さて、体調どうですか? 脇野明美さん」
脇野。私の名前だ。
「はい。もう痛いところもないです」
「先生、明美落ちた時のこと覚えてないって言ってるんだけど!」
「ああ、事故にあった人は大抵そうなるものなんだよ。その前の記憶はちゃんとあるんだよ
ね?」
「はい」
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