過去ログ - ミュウツー『……これは、逆襲だ』
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834: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2014/05/02(金) 00:12:35.59 ID:6KM+PMnKo
ミュウツーはアロエの言葉を反芻しながら、意識を自分の内側に向ける。
自身の身体に、あるいは心のどこかに、そういう穴があるのではないか。
そう、イメージしてみる。
思い出そうとするのは、生まれてからのことだ。
少しずつ、ひとつずつ思い浮かべ、辿っていく。
最近のことを思い出す。
青々とした緑に溢れた森と、友人たちの姿。
『私』がどこから来た、どんな存在なのか、気にもかけない。
追求しようともしない。
はがゆいが、なによりも安心した。
新たに得たもの、知ったことこそあれど、失ったものなどないはずだった。
少し前のこと。
昏く広く、蠱惑的な海原で受けた冷たい夜風。
暗く、湿度の高い洞窟で過ごした日々と、突き刺さる視線。
怒りと諦めと、憎しみしか自覚できなかった。
誰もが『私』を疎み、畏れ、毛嫌いしていたはずだった。
考えれば考えるほど、『父』への言い表しようのない感情ばかりが渦巻く。
心に“こごる”ものはあったが、得たものは少ない。
思い返したいことも、あまりない。
もっともっと、以前のことを、慎重に思い出す。
のっぺりとした機械が立ち並び、皆が『私』を見ていた研究所。
『父』が、周囲の白衣たちに向かって、なにごとか怒鳴っている。
きっと『父』は、『私』が弾き出す数値に満足がいかないのだろう。
『私』は申し訳なさと、そして名も知れぬ重い気持ちを強く感じていた。
それから――。
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