過去ログ - ミュウツー『……これは、逆襲だ』
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885: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2014/06/01(日) 22:41:32.57 ID:S8p8k874o

吽々、とわたしは鳴く。

わたしは自分の声が好きではない。

もっと、聞き心地のよい声が出せればいいのに、といつも思う。

今の姿になってからは、なおさらだ。

正体の知れない混沌が這い寄るような、嫌な鳴き声だ。

だから、わたしはあまり声を出したくない。

それを受け入れてくれたのも、あのひとだ。


――そうねぇ……見慣れない記号はないみたい


――**も、これ読んでみる?


わたしに向かってそう言いながら、あのひとは手元のノートに何かを書き込んでいる。

何枚も写真を撮り、懐中電灯を色んな角度から当て、まじまじと見ていた。

壁に彫られた何かのでこぼこを、ひとつも見逃すまいとしているかのようだ。

せっかく訪れることの叶った遺跡なのだから、思わず熱中するのも当然だと思う。

こういう場所……つまり遺跡を訪れることは、あのひとの仕事でもあるし、趣味でもある。

だから、邪魔はしたくない。

あのひとだって、片時も目を離したくないはずだ。


だから、声だけがわたしを見ている。

わたしは何も言わない。


――ほら、ここの記号……ううん、文字だね


――それも、見覚えあるでしょ


はい、知っています。

わたしはあなたと、ずっと一緒にいたから、知っています。

今まで、ずっと、一緒に、いたじゃないですか。

これからだって、わたしはそうするつもりです。


――今回の調査、ここまでかなあ


――ここが最深部みたいだし……単独じゃあ、これ以上は手出しできないよね


――まあいいや


――この目で、じかに見られただけでも御の字か





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