52: ◆tSiWM5GIyDZg[saga]
2013/07/14(日) 18:44:53.73 ID:EnRHzSex0
  
 「お待たせ。待った?待ってないわよねえ。言ってみたかっただけ」 
  
 「今、僕が来る瞬間見てたでしょう。待ってるはずはないと思うよ」 
  
 彼女はシンプルな浴衣姿で、僕の目の前に現れてくれていた。 
 普段は自信満々な彼女が「似合ってる?」と聞いてくるのだ。 
 もちろん似合っているので、そう告げたら喜んでいるようだ。 
  
 「行きましょう。何食べる?たこ焼き。お好み焼き。わたあめかしら」 
  
 食べ物しか頭にないのだろうか。もっとお祭りらしいものもあるはずだ。 
 あまり大きな祭でもない為、特に彼女とはぐれることもないのが幸いだ。 
 つまるところ、手を繋ぐこともなく、なんというか絶妙な距離感だった。 
  
 「あなた、何やる?射的とか、金魚すくいとかが、祭の定番よ」 
  
 「僕は型抜きでいいよ。シンプルながら、奥が深い遊びなんだ」 
  
 本当に奥が深い遊びだ。もう既に五枚近くを僕は失敗している。 
 隣で鼻歌を歌いながら遊んでいる彼女は、パーフェクトだった。 
 「あなた、不器用ねえ」と笑ってくれてるあたり、よしとする。 
  
 「歩いていたら、喉が渇いたかも。何か買ってこようかしら」 
  
 「うん。なら、僕が買ってくるよ。待ってて。何がいいかな」 
  
 「ありがとう。なら、お茶にする」 
  
  
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