56: ◆tSiWM5GIyDZg[saga]
2013/07/14(日) 18:46:41.36 ID:EnRHzSex0
「花火。綺麗じゃない」
彼女の言葉は、市販の小さな花火で打ち消されてしまった。
小さな花火だったけれど、僕たちには、それで十分だった。
「言葉の続きは、然るべき時にでも、言おうかしら」
もう、そこには涙はなかった。吹っ切れたような顔だった。
でも、僕は、彼女の言葉を察していたような気がするのだ。
何を言おうとしていたか。だって、僕も、そうなんだから。
今さらになって、こんなに素直になれるとは。そう思っていた。
「そろそろ帰りましょう。帰れば、もっとご飯が食べられる」
「その通りだ。今日は、ありがとう。また、来年も来たいな」
「ええ。わたしもよ。また、来年も一緒に来ましょう。祭に」
途中まで彼女を送って、僕たちはそこで別れた。
家に戻ると「楽しかった?」と両親に問われた。
僕はすぐに「うん」と答え、食事に手をつけた。
「いい夏の思い出になったよ」
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