113: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/25(日) 06:02:54.90 ID:79dYTcmBo
 「率直に答えてほしいの、お世辞抜きに。……私は、非凡に見えるかしら」 
  
  彼女は、私にそう尋ねた。一瞬、私は言葉の意味を理解しかねた。非凡かどうかと問われれば、間違いなく非凡だろう。あれほどの才能を有するのだ。 
  
  だが、私はどこか違和感を抱いていた。なんだろうか、この感覚は。何か、私は忘れている気がする。 
  
  そうやって押し黙っていると、千秋さんはまた、じっと私を見据えてくる。その吸い込まれそうな瞳に、私も思わず見つめ返してしまう。 
  
  と、私は気付いた。彼女の体が、小刻みに震えている。寒いわけではないだろう。だとすれば――。 
  
 (怖がっている、のか) 
  
  もしそうなら、何を怖がっているのか。私は目まぐるしく考えた。だが、分からない。刹那、ふと私の脳裏に言葉がよぎる。 
  
  ――平凡と無能の違いを理解したほうがいい。 
  
  社長の言葉だ。理由は分からないが、いま無性に、その言葉が重要で、全てを語っている。そう思えてきた。 
  
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