137: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/29(木) 14:47:36.57 ID:9rygtMkWo
「Pくん。我が社に関しての心配はいらない。君は君のすべきことを、そしてしたいことをしなさい。君には、それだけの才能があるのだから」
と言った。こんな恩知らずの私に対して、こんな優しい言葉を掛けてもらえるとは思っていなかった。最悪、罵倒されて追い出されてもおかしくはない。
『……ありがとうございます、社長』
私は再び深く頭を下げた。その私の肩へ、社長は優しく手を置く。
「さ、行きなさい。向こうの社長さんに、返事をしに行くんだろう?」
『……はい』
私は頭を上げる。そして、少しだけ笑った。温かく見送ってくれているのだ。せめて笑顔でなければ、申し訳ない。
そして私は、また深々とお辞儀をし、社長室を後にする。時間はまだ早朝であるから、社員は誰も居ない。
私は、静かに事務所の扉を開ける。まだ荷物の整理と仕事の引継ぎがあるとはいえ、この事務所で私がすべき仕事はもうなかった。
かん、かんと階段を下りる音が響く。思えば、この事務所に拾われてから七年もたつのだ、と急に感慨深くなる。
あの時の若造は、今も若造ではあるが、少しだけ一歩を踏み出した気がする。
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