204: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/09/14(土) 04:15:49.27 ID:rrrgeDjMo
「まあ、挨拶はこれまでにして、今日は正々堂々と戦わせてもらうよ。うちはまだまだ弱小だが、ようやくここまで来れた。君の移籍がきっかけ、というのは少し皮肉な話だがね」
『ええ、もちろんです。もし対戦することがあれば、うちの千秋さんが存分にお相手いたしますよ。無論、負けるつもりはございませんから』
自信満々に、そういってのける。相手も侮っているわけではない。慢心しているわけでもない。千秋さんなら、出来る。絶対的な信頼とでもいうのだろうか。
かつて私が”ガラスの声”と評したその声で、千秋さんは舞台やドラマの役を勝ち取り、そして”クリスタルボイス”と評した声で、こうやってアイドルとしての歌曲を歌い上げてきた。
その努力が報われないわけがない。
「はは、やはり君は変わったよ。まあ、そのうちまた遊びに来てくれたまえ。歓迎するからね、Pくん」
社長はそう言い残して、一番手プロデューサーを引き連れ、去っていく。
私は、その後ろ姿をずっと見つめ、見送っていた。
「……寂しいのね、Pさん」
『……え?』
「じっとしてて、今拭いてあげるわ」
千秋さんは、ドレスのポケットからハンカチを取り出すと、私の目じりをそっと拭いた。気が付かなかったが、私は涙を流していたらしい。
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