43: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/05(月) 01:21:32.52 ID:Fg9GCM/jo
ライブが終わった後、マスターが掛けただろう、ゆったりとした悲壮感漂うクラシックが、なんとなく私の心を表しているように感じる。
『はは、少し残業が長引きまして……。楽しみにしていたのですが、残念です』
私は苦笑しつつ、愛想笑いを浮かべて、ちょうど空いていたカウンター席に着いた。あまり酒は嗜まないが、今日は少しだけ飲もう。そう思い、ブランデーを注文する。
「そりゃあ、悲しいね。ま、残念賞代わりに、ピクルスをおまけしといてあげるよ」
そんなマスターの気遣いが、少し身に染みる。私はマスターに礼を言いつつ、書類を広げる。ここは限りなく私の癒しの空間ではあったが、同時に仕事を進める場でもあった。
無能な私では、こうやって時間外の労働をしなければ、既定の仕事が終わらない。最近では社畜なんて言葉がはやっているが、残念ながら私の場合はそうではない。
世の中のサービス残業とは違い、十分にできるだろう量をこなせなかったのだから、当然の帰結だ。
私はぺらり、ぺらりと書類をめくると、マスターがブランデーとピクルスを運んでくる。ことり、とピクルスの乗った小皿が目の前に置かれる。
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