54: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/11(日) 03:13:40.72 ID:fDDiOZLHo
『はっ、はっ、はっ……っ』
私は急いでいた。というか、完全にデジャヴュである。昨日もまるっきり、こんな感じだった。そうである、案の定残業が長引いたわけだ。
ただ、少し違うのは、昨日よりも大よそ二十分の猶予があることか。先ほどプロダクションを出た時は九時三十分だったから、このペースで行けば四十分には着けるはず。
私の乏しい頭で試算した結果がそれだ。ただ、問題は――。
『ああ、もう……っ! 千秋さんのっ、番っ! 終わってるかも、知れないね……っ!』
擦り切れた革靴が、がつり、がつりと悲鳴を上げる。大通りから一本逸れ、二本逸れ、そうして、私の帰宅路へと入り込む。
一番最寄りのジムはどこにあるのだろう。そんな現実逃避をしつつ、私は血反吐を吐くかもしれないと錯覚するほど、足を動かす。
そうして、見えたあのバーの扉は、やはりぴったりと閉まっている。肝心なのは、その向こう側だ。あの防音扉が閉まっているのが最悪で、その次は千秋さんの番が終わっていることだ。
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