56: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/11(日) 03:14:46.42 ID:fDDiOZLHo
『――ッ』
体が、固まった。今日は、クラシック曜日のはずだったが、私の耳に聞こえてきたのは、流麗なバイオリンの音でも、芳醇なピアノの音でもなかった。
聞こえてきたのは、声。長く、高く伸びる、透明な声。他に楽器の音色は聞こえない。クリアなその声、ただ一つだ。
なのに、指一本さえ、動かすことが憚られた。それほどの声量と、音質。圧倒される、声の奔流。今まで感じたことのない声圧だ。
ただ、ほんの一瞬。ところどころに私は違和感を抱く。それが何かを、私は知らず、そして知ることもなく、気が付けば私は壁にもたれ掛かって座り込んでいた。
「びっくりしたかい、お客さん?」
そんな声が、頭上より降りかかる。私は見上げると、そこにいたのはマスターだった。
私は少しだけ力なく笑う。
217Res/148.60 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。