57: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/11(日) 03:15:13.86 ID:fDDiOZLHo
『……ええ、圧倒される、というのはこういう事なのでしょうね』
足に力を込めて、私は立ち上がる。体中のエネルギーを持っていかれたような気がする。そのぐらい、千秋さんの声は私の体に、畏敬の念を抱かせたのだ。
『すみません、いつものを頂けますか』
「あいよ。サラダセットとブレンドコーヒーだね」
マスターはカウンターへと戻っていく。そのあとを追うように、私もカウンターへと座り、鞄を置いた。今日は、仕事はないのでゆっくりと夕食を楽しめそうだ。
「あら、Pさん。約束通り、来てくれたのね」
今度は、そんな声が背後から聞こえる。振り返ると、そこにはいましがたステージから降りてきたばかり、と言ったような千秋さんの姿。
額からは汗を滴らせ、その黒髪はしっとりと濡れている。浮かんだ汗は、その白い肌と相まってさながら真珠のようだ。
こう言っていると、私が奇妙な性癖を持っているように思えてくる。もっとも、そんな性癖の一つや二つあれば、私もここまで平凡な人間たり得なかっただろうが……。
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