過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part5
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166: ◆IRWVB8Juyg[saga]
2013/07/31(水) 02:58:06.37 ID:TCLX5nBXo
 美しい、薄い桃のかかった髪をたなびかせて少女が空を駆ける。
 まとわりつこうとする真っ黒な呪いの泥へ銀の閃光を走らせ散らすと、中心の赤い核を蹴りぬいた。

琴歌「きりがありませんね……卑怯ですよ! もうっ!」

 正義に目覚め、義憤に燃えている――というわけでもないが。彼女には戦う理由がある。
 少なくとも、目の前で起きている理不尽が。起きようとしている不条理が許せない。

 彼女は世間知らずのお嬢様だった。蝶よ花よと育てられ、動かない両足を周りの人の助けによって乗り越えられてきただけの、お嬢様だった。
 そんな彼女は、ある日さらわれて自由に動く銀の脚と、戦うための技術を教えられる。
 未知の知識、未知の世界。怖いと思う気持ちと同時に持っていたのは、それに対する探究心。

 浚われてしまった悲しみも、どうすればいいのかわからない不安も。
 初めて知った感覚へ高まる鼓動にはかなわなかった。大丈夫だと、思えていたから。

 その中で、友人もできた。同じ悩みを持って、相談して、悪さをするだなんて!
 まるでお話の中の『悪い子』みたいだなんてことを思い、それすら楽しく思えていた。

 無事に脱走してから、はぐれてしまったのは困ったけれど。きっとみんなは大丈夫だと彼女は信じている。
 それは、彼女が能天気だから勝手に思っていることなのかもしれない。――それでも。

 彼女、西園寺琴歌は世間知らずのお嬢様だ。
 それでも、人のために戦うことを。人のことを思う心を。知らないわけではないのだ。


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