過去ログ - 八幡「だから…………さよならだ、由比ヶ浜結衣」
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441: ◆QiIiNKb9jA[saga]
2013/09/06(金) 22:46:31.33 ID:upW2heo+0
それから雪ノ下のマンションを去るまでの間は、たぶん俺が今まで生きてきた中で一番密度の濃い会話をした時間だった

と思う。まぁ、俺が他人としてきた会話などたかが知れているのかもしれないが、今日のこの時間のことはこれから先も

ずっと忘れないだろう。少なくとも、現段階においては俺にとっても雪ノ下にとっても最善の選択肢を取れたと思う。

嘘や欺瞞ではなく、また妥協でもなく。ただ、未だに自分の考えていること全てを話せたわけではない。雪ノ下は、あと

は俺と由比ヶ浜の問題だと思っているかもしれないがそう首尾よくいくともわからない。俺の考えが明らかになる前に、

今度こそ完全に失望される可能性も充分ある。しかし、それでも俺は自分のやり方を通したい。現時点で俺が考え得る

最善の方法を。


マンションの建物から出て、敷地内の庭園から空を見上げるともう星が見え始めていた。風が吹くと庭園に植えてある木々

の葉がかさかさと音を立てる。落葉樹はもうほとんど葉が落ちているものも何本か見受けられる。その光景を見て、俺は

最後の一葉の一部分を思い出す。確かその短編小説では、あまり状態の良くない肺炎で入院している画家が窓の外の木の

葉を見て「最後の葉が落ちたら自分も死ぬ」みたいなことを思っていた筈だ。話の流れはともかくとしてもどうにもこの

登場人物の心情は理解できなかった。病気で弱気になり、自分の境遇をその木の葉っぱに重ね合わせていたのは理解でき

ても、だからといって葉が全部落ちたら自分も死ぬというのはいきすぎだ。どのみちいつか葉は全て落ちるのだし、それ

でいつ落ちるか不安になるよりもさっさと全部落ちてしまった方が気が楽になれると思うのだが。ただ、まぁ由比ヶ浜

なんかは最後の一葉を描き足す方のタイプの人間なんだろうな、たぶん。だが、残念ながら自分はそうではない。


だから、俺はこれから最後の一葉を落としに行くことにする。


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