過去ログ - 【咲安価】京太郎奇怪綺譚：XXI巻目【都市伝説】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲安価】京太郎奇怪綺譚：XXI巻目【都市伝説】

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311:1[saga]
2013/08/11(日) 00:10:19.51 ID:zq2pZFT5o

微睡む意識の中、沈んでいく私。

数分前まで思い出せなかった昨日の事柄が、何故か記憶として思い出せる。

姫様が、蛇に噛まれそうになっていた事。

それを庇って蛇に噛まれた事。

姫様に勘付かせないように、内緒で手当をした事。

戒能さんの話を思い出し、電話しようとした事。

そうしようとしたら、何故か一部の記憶が飛び、電話が出来なかった事。

あの瞬間から、きっと私はあの蛇の無自覚な操り人形だったに違いない。

記憶も、思い出も、この身体も。良いようにされている現実に、ひどく腹が立つ。

蛇に不快感を抱くのは、蛇が私の胸の中に潜んでいたからというだけではない。

蛇が私を追い詰めるため、私の心の中の暗い部分を見せつけてきたからだ。

……悔しい事に、それはひどく効果的で。

最後のあの人の言葉とセットになって揺れた心は、この蛇が付け込むには十分だったらしい。

何も出来ない。

指一本動かないし、声は出ないし、視線を動かしても何一つ見渡せない暗闇だ。

ひんやりとしていて、肌に感覚を集中するとぬるっとしているようにも思え、ひどく気色が悪い。

これをもっと心地よく、暖かくしたものがあの人の『格納』なんだろうか？　と、無体に思う私の目の先に。

何かが見える。はっきりしないが、何かが見える。

ぼけた視界のように見える映像の先には、姫様が映っている。

なんとなくだが分かる。これは、私の視界だ。

乗っ取られた私の身体の視界が、うすぼんやりと私の視界に流れ込んできている。

その視界の中で、私はその六本の腕の一つを、姫様に向かって振り下ろし―――

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