過去ログ - 【咲安価】京太郎奇怪綺譚：XXI巻目【都市伝説】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲安価】京太郎奇怪綺譚：XXI巻目【都市伝説】

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314:1[saga]
2013/08/11(日) 00:22:20.85 ID:zq2pZFT5o
強く念じる。

一瞬。一瞬だけ、身体の主導権を取り返し、振りかぶった腕を止める。

今の私なら、念じるだけで心臓だって止められる。

「この脳からの指示に逆らえば心臓が止まる」とすら錯覚させる意思の刃で、身体を無理やり乗っ取る。

しかし、長続きはしない。せいぜいが1.5秒の話。

それでも、私が身体を再び乗っ取られた頃には……その結界の中には、誰も居なかった。

「小蒔ちゃんを、お願いね」

「信じてるから……貴方を。絶対に、そうなれないと思えるくらいに」

不自然な『眠気』が、身体を満たしていく。

精神も、魂も、身体も、そしてこの蛇ですら眠らせる不可思議な眠気。

数日でこの身体は目覚めることはないだろう。

誰が仕掛けてきたのかも、薄々わかっている。

「小蒔ちゃん、初見ちゃん」

「……」

「ごめんなさいね」

目覚めた時には、この命は絶たれている可能性が高い。

それでも良いと、そう思える。

だって、ちゃんと守れたのだから。

「あの子を傷つけたら、その瞬間から私は私じゃなくなる」

「大切な、家族だから。家族は、家族を大切にするし、されるものだもの」

「……ふふふ、ちょっとだけ、笑っちゃうわね」

家族を守れて終われるのなら、それでもいい。

それが彼女の胸中に湧いた、たった一つのか細い光。

「私が、そうして欲しかっただけなのに」

やがて、瞼が落ち。石戸霞は眠りについた。

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